フィレンツェに燃える

『フィレンツェに燃える』は、宝塚歌劇団が1975年に初演したミュージカル作品です。作・演出は柴田侑宏が担当しました。

作品概要

19世紀中頃、イタリア統一運動の機運が高まるフィレンツェを舞台に、侯爵家の兄弟、アントニオとレオナルドを中心に物語は展開します。性格が対照的ながらも互いを思いやる兄弟と、彼らを取り巻く人々との間で繰り広げられる愛と葛藤、そして国家への想いが描かれています。

この作品のテーマは「愛の二面性」。純粋な愛と欲望という、相反する感情の間で揺れ動く人間の姿を、様々な愛の形を通して表現しています。

初演時の併演作品は、宝塚大劇場公演が『ザ・スター』、東京宝塚劇場公演が『ボン・バランス』でした。

本作は、柴田侑宏が昭和50年度芸術選奨新人賞を受賞するきっかけともなりました。初演以降、柴田の存命中には再演されませんでしたが、2019年の柴田の逝去後、2022年に47年ぶりの再演が実現。作品の普遍性が再認識されることとなりました。

ストーリー

物語は、フランス革命の影響が残るフィレンツェが舞台です。聡明な兄アントニオと、奔放な弟レオナルドは、元歌姫パメラを巡り、一度は失いかけた兄弟の絆を、彼女の死によって取り戻します。しかし、レオナルドは国家統一のための義勇軍に身を投じることを決意し、旅立っていくというストーリーです。

公演情報

初演は以下の日程と場所で行われました。

1975年2月1日 - 2月27日（新人公演：2月19日）：宝塚大劇場
1975年4月3日 - 4月27日（新人公演：4月18日）：東京宝塚劇場

宝塚大劇場公演は、形式名が「ミュージカル・ロマンス」で、全12場構成でした。

スタッフ

作・演出：柴田侑宏
作曲・編曲：寺田瀧雄
編曲：河崎恒夫
音楽指揮：野村陽児
振付：喜多弘
装置：黒田利邦
衣装：小西松茂
照明：今井直次
音響・録音：松永浩志
小道具：上田特市
効果：扇野信夫
演出助手：村上信夫
制作：野田浜之助

主な配役

アントニオ：汀夏子（宝塚：みさとけい、東京：上條あきら）
レオナルド：順みつき（麻実れい）
パメラ：高宮沙千（麗美花）

（）内は新人公演の配役です。

初演時の背景

柴田侑宏は、本作をドストエフスキーの小説『白痴』のバリエーションであると評していました。実は、柴田は宝塚での『白痴』の舞台化を検討していましたが、実現には至りませんでした。その企画断念が、本作の制作に深く関わっています。

柴田は『白痴』から感じ取った「愛の二面性」というテーマに強いこだわりを持ち続けました。そして、このテーマを軸に新たなオリジナル作品を構想。初演当時の雪組の主要メンバーを念頭に、設定などを練り直して本作を執筆しました。

このような経緯から、柴田は『白痴』とは異なる作品に仕上げながらも、独自の視点から「愛の二面性」というテーマに深く切り込もうとしたのです。

参考文献

小林公一監修『宝塚歌劇100年史 虹の橋 渡りつづけて（舞台編）』阪急コミュニケーションズ、2014年
小林公一監修『宝塚歌劇100年史 虹の橋 渡りつづけて（人物編）』阪急コミュニケーションズ、2014年

もう一度検索