喜多弘

喜多 弘 (きた ひろし)

喜多弘（1932年7月 - 1999年1[[2月5日]]）は、宝塚歌劇団の専属振付家として名を馳せた。彼は大阪府堺市に生まれ、7人兄弟の三男として育った。

略歴

喜多は洋菓子製造業の父の下で幼少期を過ごし、高校を卒業後に東京に上京。緑ヶ丘音楽舞踊学校に入学することになった。彼の同級生には、後に著名な俳優となる財津一郎や白木万理がいた。学校在学中、彼の優れたダンス技術が評価され、当時のショービジネス界で知られたダンスチーム「ダン・ヤダ・ダンサーズ」の応援メンバーに選ばれるという快挙を果たした。

その後、OSK（大阪松竹歌劇団）の振付を手掛けるようになり、1962年にはフリーの振付助手として星組公演『僕は君』で振付を担当。この作品を通じて、彼は宝塚のベテラン演出家である白井鐵造にその才能を認められ、1967年2月には宝塚歌劇団の専属振付家に招かれることとなる。次第に彼は、当時の阪急社長小林米三からアメリカ・ブロードウェイへの留学を命じられ、帰国後の1968年6月には星組公演『ヤング・メイト』で専属振付家としてのデビューを果たした。以降、退職までに約300本の振付を担当した。

1997年5月に星組公演『魅惑Ⅱ』を最後に宝塚歌劇団を退職したが、1999年に急逝。その業績を称えられ、2014年には『宝塚歌劇の殿堂』の最初の100人の一人として殿堂表彰を受けている。彼の弟子には羽山紀代美がいる。

人物・エピソード

喜多の振付には、劇作品の中で再演のたびに舞台に姿を表わす名場面が多く存在する。例えば『ベルサイユのばら』の「ばらのタンゴ」や「ボレロ」、『風と共に去りぬ』の「セントルイス・ブルース」「ナイト&デイ」などが代表的な作品であり、彼の特徴的な振付は男役をより美しく、格好良く見せるものであった。特に、幾何学的な舞台構成に優れ、多くの生徒によるロケット（初舞台生のための舞台表現）の振付を18回にわたって担当した。

その厳格な指導は「鬼の喜多」として知られ、生徒への愛情からくるものであった。振付を間違えた生徒に対しては、しばしば怒声や罵声が飛び、時には小道具や灰皿が飛んでくることもあった。しかし、稽古が終われば優しい一面が見え、振付を担当した初舞台生との公開稽古の後には、共に涙を流すこともあった。こうした温かい人柄から多くの生徒に慕われていた。

しかし、1978年、彼は稽古中に感覚性失語症を患い、言葉が聞き取りにくくなる後遺症を抱えることとなる。音楽を相手とする振付家にとってこれは致命的な状態であった。医師からは「仕事を忘れて趣味に没頭してください」と言われたが、彼は「趣味がタカラヅカだ」と答え、仕事復帰を強く望んだ。しかし、劇団側は再発を懸念し、彼に休業を命じる。喜多は仕事を奪われ、孤独の中で心中したいとの思いに駆られることもあったが、多くの仲間や生徒の励ましにより立ち直り、翌年には無事に仕事に復帰を果たす。

主な振付作品

喜多弘が手掛けた主な振付作品には、以下のものがある：

• - 『ノバ・ボサ・ノバ』
• - 『虞美人』
• - 『ザ・フラワー』
• - 『ベルサイユのばら』
• - 『風と共に去りぬ』
• - 『オペラ･トロピカル』
• - 『ジュテーム』
• - 『レビュー交響楽』
• - 『ムーンライト・ロマンス』
• - 『愛あれば命は永遠に』
• - 『サマルカンドの赤いばら』
• - 『キス・ミー・ケイト』
• - 『ラ・ノスタルジー』
• - 『ル・ポアゾン 愛の媚薬』
• - 『夢・フラグランス』
• - 『ナルシス・ノアール』
• - 『ジャンプ・オリエント!』
• - 『ラ・カンタータ』
• - 『ダンディズム!』
• - 『TAKARAZUKA・オーレ!』
• - 『国境のない地図』
• - 『プレスティージュ』
• - 『ゴールデン・デイズ』
• - 『魅惑II』

喜多弘は、その努力と熱意によって宝塚歌劇団の歴史に名を刻んだ振付家であり、今も多くの人々に記憶され続けている。

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