フィンマルク県

フィンマルク県：極北の地、多様な文化と歴史

フィンマルク県は、ノルウェー最北端に位置し、ヨーロッパ本土の最北端も含む広大な県です。かつてはトロムス県と合併していましたが、2024年1月に再び独立しました。この地域は、歴史的にサーミ人が居住しており、ラップランドの一部としても知られています。

名称の由来と多言語性

フィンマルクの名前は、ノルウェー語の「フィン人（サーミ人の古い呼び名）の土地」に由来します。また、ラップランドという名称は、1700年代のリンネの探検にちなんで付けられました。かつてはヴァードウス県と呼ばれていたこともあります。フィンマルク県では、ノルウェー語の他に、サーミ語（北部サーミ語）とクヴェン語も公用語として使用されています。

人口と地理

フィンマルク県の人口は、約7万5千人と非常に少ないです。これは、極寒の気候が原因の一つと考えられます。しかし、その広大な面積はノルウェー最大です。地理的には、沿岸部にはフィヨルドが入り組み、内陸部には山脈や氷河、そして広大なフィンマルク高原が広がっています。

マーゲロイ島にあるノールカップは、ヨーロッパ最北端として有名です。また、ヴァードーは北欧最東端の町であり、イスタンブールやサンクトペテルブルクよりも東に位置します。

フィンマルク高原は、県の中央から東にかけて広がり、湖や河川が多い地域です。夏には多くの蚊が発生し、サーミ人がトナカイを飼育しています。また、県内には国立公園も設置され、極北の森林環境の保護にも努めています。

気候と極現象

内陸部のフィンマルク高原は、ノルウェーで最も寒く、過去には-51.4℃を記録しています。しかし、沿岸部は凍らない海の影響で比較的温暖です。極北に位置するため、夏には白夜、冬には極夜が起こります。

特に、ヴァドソーでは5月中旬から7月末まで白夜が続き、11月下旬から2月まで極夜となります。フィンマルクはオーロラが観測しやすい地域としても知られており、アルタなどはオーロラ研究の拠点となっています。

政治経済

県庁所在地はヴァドソーですが、人口が最も多いのはアルタです。沿岸部では漁業が盛んであり、タラバガニの漁獲も行われています。鉱工業では、アルタの粘板岩が有名です。観光業も拡大しており、ノールカップ、アルタ、ハンメルフェストなどが人気です。

軍事的な側面では、ラクセルヴ空港がノルウェー王国軍とNATO加盟国によって使用されています。また、ロシアとの国境警備も重要な役割を担っています。

ハンメルフェストでは天然ガス生産が行われており、海底に眠る石油資源の開発も地域の経済を活性化させています。

歴史と民族

フィンマルクには、約1万年前から人間が居住していたと考えられています。この地域には、サーミ人、ノルウェー人、クヴェン人の3つの民族が共存しており、それぞれが独自の文化と歴史を持っています。サーミ人は、古くからこの地に住み、トナカイの放牧などの伝統文化を守り続けてきました。ノルウェー人は10世紀頃から植民を始め、19世紀にはクヴェン人がフィンランドから移住してきました。

ノルウェー政府は、当初サーミ人の文化を同化させようとしましたが、サーミ人の民族意識の高まりとともに、サーミ語教育など文化の継承が重視されるようになりました。

スウェーデンとの連合と独立

かつてフィンマルクは、デンマーク王を宗主とする連合王国の一部でした。その後、スウェーデンとの連合を経て、1905年にノルウェーが独立すると、フィンマルクはノルウェーの領土となりました。

第二次世界大戦では、ナチス・ドイツが焦土作戦を展開し、多くの住民が避難しました。その後、平和的にノルウェーへ返還されました。

トロムス県との合併と解消

2020年、フィンマルク県はトロムス県と合併し、トロムス・オ・フィンマルク県となりました。しかし、2022年に合併が解消され、2024年1月1日にフィンマルク県が復活しました。

基礎自治体

フィンマルク県には、2024年1月1日時点で18の基礎自治体があります。これらの自治体では、ノルウェー語の他に、北部サーミ語やクヴェン語も公用語として使用されています。


フィンマルクは、厳しい自然環境の中で、多様な文化と歴史が育まれてきた地域です。その独特な魅力は、多くの人々を惹きつけています。

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