トロムス県

トロムス県は、ノルウェー北部に位置し、北極圏内に広がる県です。その複雑に入り組んだ海岸線と、山がちな地形が特徴です。2024年1月1日にフィンマルク県との合併が解消され、現在のトロムス県が再設置されました。

地理

トロムス県の海岸線は、フィヨルドによって深く刻まれ、多くの島々が点在しています。主な島としては、ヒン島、グリーュト島、セーニャ島などがあり、外洋からの風や波を防ぐ役割を果たしています。これらの島々の内側には、ヴォーグスフィヨルド、アーンドフィヨルドなどの大きなフィヨルドが内陸へと伸びています。

内陸部には、アルテヴァトネット湖が広がっており、リュンゲン山脈がそびえ立っています。リュンゲン山脈には氷河が点在し、最高峰のイエッケヴァッリは1,833メートルに達します。クヴェーナンゲンにも氷河があり、エクスフィヨールヨーケレン氷河からは氷塊が海に流れ落ちる様子が見られます。これはヨーロッパ本土では珍しい現象です。

県内最大の川はモールセルヴァ川で、その途中にあるモールセルヴァ滝は、総延長600メートル、高低差22メートルにも及ぶ壮大な滝です。

気候

トロムス県は北緯70度近くに位置していますが、メキシコ湾流の影響で冬は比較的温暖です。夏は涼しく、短期間です。11月から4月にかけては寒さが厳しく、雪が多く降り、雪崩も起こりやすい地域です。

山地の東側は西側よりも乾燥しており、スキヴォスでは88日連続で晴天が観測されたこともあります。降水量は地域によって大きく異なり、スキヴォスでは年間300mm未満ですが、リンゲン山地西部では1000mm程度になります。マーセルヴでは気温が-35度から30度まで変動し、地域によって気候の特徴が異なります。

自然

トロムス県には、ヘラジカ、アカギツネ、ウサギなど多くの動物が生息しており、夏にはヒグマが見られることもあります。山岳地帯にはトナカイやクズリ、河川にはカワウソ、森林にはオオヤマネコ、海岸線にはネズミイルカが生息しています。鳥類では、ライチョウ、オジロワシ、カモメなどがよく見られます。

内陸部では森林限界線が見られ、カバノキが比較的標高の高い場所まで生育しています。低地では、ナナカマド、ヤマナラシ、ヤナギなどが多く見られます。また、樹齢500年を超えるようなアカマツも存在します。

オヴル・ディヴァイダル国立公園は、自然保護区として指定されており、オスター谷、キルケス谷など、多くの谷がハイキングコースとして整備されています。ライサ谷は、川が流れ、カバノキ、マツ、ハンノキなどが生い茂り、多くの鳥類が生息しています。

文化と産業

トロムソはノルウェー北部の中心都市であり、大西洋に面した港町です。オーロラ観測地としても有名で、多くの観光客が訪れます。トロムソ大学は世界最北の大学であり、天体観測も行われています。

沿岸地域では漁業が主要な産業で、スキイェルヴォイ、トロムソ、ハーシュタなどが漁港として賑わっています。南部の地域では農業も行われており、短い生育期間を利用して作物が育てられています。ノルウェー国防軍もこの地域における重要な雇用主であり、多くの人が軍関連施設で働いています。

県内には、トロムソ空港とハーシュタ/ナルヴィク空港の2つの空港があり、E6、E8道路が主要な交通路となっています。また、多くの島があるため、橋や海底トンネルが整備されています。

歴史

トロムスには、石器時代から人が住んでいたとされ、岩窟には壁画が残っています。最初に住み始めたのはサーミ人で、その後、ノース人がこの地域に進出しました。10世紀頃からは、バイキングも現れ、南中部トロムスはハロガランド王国の一部だったと考えられています。

19世紀後半には、フィンランドから多くのクヴェン人が移住し、この地域に定住しました。1844年にはトロムソ県が設置され、1919年にはトロムス県となりました。2020年にはフィンマルク県と合併しましたが、2024年に再分割され、現在のトロムス県が誕生しました。

基礎自治体

トロムス県には21の基礎自治体があり、自治体によってノルウェー語の筆記法が異なるほか、北部サーミ語やクヴェン語が公用語になっている地域もあります。

この地域は、豊かな自然と多様な文化が共存する魅力的な場所であり、多くの人々にとって、かけがえのない故郷となっています。

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