フィンランドの大統領

フィンランド大統領：歴史と役割

フィンランド大統領（フィンランド語: Suomen tasavallan presidentti, スウェーデン語: Republiken Finlands president）は、フィンランド共和国の国家元首です。大統領は内閣（国家評議会）と共に行政権を行使しますが、その権限は時代と共に変化してきました。

大統領職の成立と権限の変遷

フィンランド内戦後の1919年に新たな憲法が制定され、大統領職が設置されました。当初、大統領は強大な権限を有していましたが、1980年代以降、その権限は徐々に縮小され、議院内閣制への移行が進められました。2000年と2012年の憲法改正によって、この移行は決定的なものとなり、現在では大統領の権限は主に形式的なものに制限されています。

大統領の選出と任期

大統領は国民の直接選挙によって選出されます。1回目の投票で過半数の票を獲得した候補者がいない場合は、上位2名による決選投票が行われます（二回投票制）。

立候補資格は、18歳以上の生来のフィンランド国民に限られ、国会に議席を有する政党、または2万人以上の有権者団体の推薦が必要です。任期は6年間で、1回のみ再選が可能です。国会議員との兼職は禁止されています。非常時に大統領が職務を遂行できない場合は、首相がその代理を務めます。

大統領の権限

現在の大統領の主な権限は以下の通りです。

首相の任命: エドゥスクンタ（議会）で選出された首相を任命します。
大臣の任命: 首相の指名に基づいて大臣を任命します。
国家公務員・外交官の任命: 国家公務員や外交官の任命権を有します。
布告権: いくつかの布告権を持ち、法の承認と特命議会の招集を行うことができます。
拒否権: 議会が可決した法案に対して拒否権を有していますが、議会はこの決定を覆すことができます。
国防軍最高司令官: 形式的にフィンランド国防軍の最高司令官であり、士官の形式的な任免権を有します。軍の動員については、内閣の提案により大統領が行います。

外交は形式上大統領が行うとされていますが、実際には首相及び内閣が主導します。

まとめ

フィンランド大統領は、かつて強大な権限を有していましたが、議院内閣制への移行に伴い、その役割は大きく変化しました。現在では、国家元首としての象徴的な意味合いが強く、実質的な政治権限は首相と内閣が担っています。

参考文献

* 山崎博久「半大統領制から議院内閣制へ : フィンランドの経験から」『高岡法学』第38巻、高岡法科大学法学会、2020年、1-50頁、doi:10.24703/takahogaku.38.0_1、ISSN 0915-9339、CRID 1390848250107389952。

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