フィンランドの政治

フィンランドは、議院内閣制に近い半大統領制を採用しており、間接民主制、共和制、多党制を社会構造としています。大統領が元首であり、外交を主導し、国防軍の最高司令官を務めます。首相は政府の長であり、行政権は政府によって行使されます。

概要

権力分立

立法権: フィンランド議会（EduskuntaまたはRiksdag）が保有。政府は議会に対し法律の改正・伸張を提案する権利を持つが限定的。大統領は議会決定に対する拒否権を持つが、議会はこの決定を覆すことが可能。
行政権: 首相を首班とする政府（内閣）が行使。
司法権: 行政、立法から独立。正規の裁判所と行政裁判所の二つのシステムからなり、それぞれ最高裁判所と最高行政裁判所に率いられている。行政裁判所は公的決定の審判を処理。憲法裁判所は存在せず、法の合憲性を争うことはできない。

大統領の権限

フィンランドは議院内閣制を採用していますが、大統領は外交政策（内閣との共同運営、特に安全保障関連）や軍の最高司令官など、特記すべき権限を有しています。2000年のフィンランド基本法制定以前は、大統領の権限はより強大でした。

参政権

18歳以上のフィンランド国民、および選挙地に2年以上居住している18歳以上の外国人に参政権が認められています。フィンランドは女性に普通被選挙権を与えた最初の国の一つです。

労働協約

労働協約は重要な政治問題であり、交渉は高度に中央化されています。政府が財務政策を調整するために参加することもあります。フィンランドは万人に合法な労働組合を持っており、労働組合、雇用者、政府が包括的な所得政策の合意に達することがあります。代表的な労働組合として、SAK、STTK、AKAVA、EKがあります。

憲法と法律

現在の憲法典は、2000年3月1日に制定されたフィンランド基本法です。民法はスウェーデンの法を基にしています。最高裁判所は、現行法の解釈や変更、制度化を求めることがあります。裁判官は大統領によって任命されます。

フィンランド基本法と司法制度の特筆すべき点は、最高裁判所が法の違憲性を宣言する明確な権利を持たないことです。法の合憲性は原則として議会の簡単な投票で確認されますが、必要に応じて議会の基本法委員会が再考し、変化を推奨します。基本法委員会は慣習的に憲法裁判所の役割を果たします。

フィンランドの法体制の特殊な点は、基本法の修正案と同じ手順で制定される一般法に基本法の例外を作成できることです。例えば、有事の際に国家評議会から与えられる即応体制法は、憲法的な基本権利に作用し、基本法改正案と同じように制定されますが、通常の法と同様に撤回できます。

基本法委員会の検討に加え、すべてのフィンランドの裁判所は、基本法と一般法の矛盾が明らかである場合に基本法を優先する義務があります。

政治体系

フィンランドは議会主義の半大統領制の政治体系です。大統領は形式上外交政策に責任を持ちますが、最も権力のある機関は首相が率いる内閣（国家評議会）です。内閣は複数の政党から構成され、議会選挙で最も支持を得た政党の代表が綱領の交渉責任を担います。大臣と内閣は議会の信頼を得続けなければならず、選挙で落選すれば辞職するか、閣僚の入れ替えを行います。

国家評議会は、首相、司法長官、その他中央政府の様々な部門の大臣で構成されます。

大統領

大統領は外交業務の主導権を内閣と共同で持ちますが、重要な国際合意や戦争・講和の決定を除き、議会に従うことになっています。また、大統領は軍の最高司令官であり、布告権と任命権を持ち、法の承認と特命議会を招集することができます。一般的に、大統領は議会で選ばれた首相を任命し、残りの内閣の大臣は首相の提案によって選ばれます。

国家評議会

国家評議会は、大統領、司法長官、その他中央政府の様々な部門の大臣によって構成されます。大臣は内閣の参与になることを義務付けられておらず、正式には政治団体との関係は問われません。大統領は議会の審理の後、投票によって議会に承認された首相候補者を任命します。首相は内閣の残りの大臣を選択し、これらの大臣は大統領によって正式に任命されます。

EUとの関係

現在、大統領と首相のどちらがEUにおいてフィンランドの第一の代表であるかについて議論があります。2000年の基本法制定はこの問題の解決には至りませんでした。この法律は外交政策の下にEUの事柄を置き、首相の範疇に入れましたが、他の元首との談話は大統領の責任下での外交方針の行使と規定しています。

法の修正によって、近年少なくともEUの軍事作戦の責任の所在を明確にするための規約が作成されています。これは安全保障と外交政策の問題であると考えられますが、完全に画定しているとは言えません。

立法

議会

フィンランド議会は一院制で、定員200名です。議員は立法の最高権威であり、フィンランド基本法を改正し、国家評議会の解散権を持ち、大統領の拒否権を覆すことができます。これらの行動は違憲立法審査を受けることがありません。法律制定は国家評議会または議員の一人から開始できます。

議員は、複数立候補地区のある非拘束名簿式の比例代表制に基づいて4年間の任期で選出されます。現役の兵役義務のある軍人と高位の司法官を除き、18歳以上の人間であれば被選挙権を持ちます。通常任期は4年ですが、議会議長の助言の後、首相の要請で大統領が議会を解散させ、新しい選挙を命じた場合、任期が短縮されます。

政党

議会は、普通選挙が実施された1906年から国民連合党、中央党、社会民主党によって支配されてきました。ただし、1916年に社会民主党が103議席を獲得した例を除き、これらのいずれの党も単独過半数を得たことはありません。1944年以降、フィンランド共産党が重要な要素となり、1958年には共産党と社会民主党左派から形成されたフィンランド人民民主連盟と同数で最大政党となりました。共産党の支持は1980年代に入ると急激に減少し、環境保護派の緑の党が台頭しました。スウェーデン人民党は、言語政治におけるフィンランド人のスウェーデン語話者を代表しています。

2023年のフィンランド総選挙では、国民連合党がフィンランド議会の第1党となりました。

選挙制度と政党

フィンランドの比例代表制は多党制を促進しており、結果として多くの連立内閣が生まれています。近年、連立政府の平均寿命は短い傾向にあります。1980年頃からの傾向として、選挙期間中の連合規定が維持されています。

フィンランドでは、全国規模で大統領と議会議員を選挙します。大統領は6年間の任期で選ばれ、議会は200名の定員を持ち、4年の任期で複数人区の比例代表制で選出されます。フィンランドは多党制が強く、3つの強い政党があり、これらの党は単独で力を得る機会があり、他の党と連立を組む傾向があります。大統領選挙、議会選挙に加えて、欧州議会議員選挙が5年ごとに行われ、地方選挙も4年ごとにすべての自治体で一斉に行われています。

司法

フィンランドの司法体系は、一般の民事裁判所、刑事裁判所と、個人と行政組織間の訴訟に対応するための行政裁判所に分けられます。法は成文化されており、裁判は地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所から構成される三審制です。行政裁判の過程は、個人が請求をするのに安価で、金銭的リスクが低いため、人気があります。

通常裁判所に加え、若干の特別裁判所があります。例えば、大統領、最高裁の裁判官、国家評議会の閣僚、大法官、議会のオンブズマンなどの公職者の犯罪処理の告訴のための高等裁判所があります。

フィンランドには人身保護条例も保釈も存在しませんが、審理前の拘留は最長でも4日間に抑えられています。拘留されている者には電話の権利はありませんが、弁護士を呼ぶことはできます。捜索令状は厳密には必要なく、警察官によって発行されることが一般的です。盗聴に関しては裁判所命令が必要になります。

行政

フィンランドは民主的で独立した自治体に分けられており、自治体は自らを「市」または「自治体」と呼ぶことができます。自治体はそれぞれの議会によって運営され、議会は4年ごとに比例代表制で選挙されます。税負担の多くは自治体によって徴収されます。自治体は州や県と協力し、首都圏はヘルシンキ都市圏議会を持っています。

2009年まで、国は6つの州に分けられていました。5つの本土州は役人で構成された州委員会によって運営されており、それぞれが大統領が指定した知事に率いられていました。オーランド県はスウェーデンとフィンランドの間に位置し、1921年の国際協定により地方自治を行っています。島の住民は完全にスウェーデン語話者であるという特徴があります。政府機能は県議会に与えられており、議会はオーランド市民から直接選挙された30人の代表によって構成されています。

対外関係

1991年のソビエト連邦の崩壊後、フィンランドは1947年のパリ講和条約で課された制約から自由になりました。ソ芬間の友好、共同戦略、（制限の含まれた）相互援助等の協定は解消されました。フィンランドはスウェーデン、オーストリアと共に欧州連合へ加入し、自らを「軍事的非同盟」と強調しています。国連主催の平和維持活動はフィンランドが引き受け、果たす事実上唯一の国外軍事貢献です。

フィンランドの政治