フィールーズ・シャー・トゥグルク

フィールーズ・シャー・トゥグルク（1309年 - 1388年9月20日）は、トゥグルク朝の第3代スルターン（在位：1351年 - 1388年）です。先代スルターン、ムハンマド・ビン・トゥグルクの従兄弟にあたります。

即位と国家再建

1351年、ムハンマド・ビン・トゥグルクの崩御を受け、フィールーズ・シャー・トゥグルクはスルターンの地位を継承しました。当時のトゥグルク朝は、ムハンマド・ビン・トゥグルクの遠征による財政悪化と王朝の衰退という深刻な問題を抱えていました。フィールーズ・シャー・トゥグルクは、これらの問題に対処し、国家の再建に力を注ぎました。

内政重視の政策

フィールーズ・シャー・トゥグルクは、内政を重視し、行政改革に重点を置きました。貴族の反乱を抑えるために、官職、領地、特権の世襲化を容認する一方で、失業者に対する職業補導や結婚資金制度の創設など、社会福祉の充実にも取り組みました。また、多くの新しい都市や灌漑施設を建設し、罪人に対する残酷な処罰を廃止するなど、社会の安定と発展に貢献しました。

宗教政策

宗教政策においては、ヒンドゥー教徒に対して一定の理解を示しましたが、イスラーム教への改宗を奨励する政策も行いました。この政策は、社会に一定の影響を与えたと考えられています。

対外政策

対外政策においては、ベンガル地方への遠征を試みましたが、成功を収めることはできませんでした。デカンのバフマニー朝とは戦端を開くことなく、比較的平和な関係を維持しました。

崩御と後継者

1388年、フィールーズ・シャー・トゥグルクは80歳で崩御しました。彼の死後、曾孫であるギヤースッディーン・トゥグルク2世が跡を継ぎました。

フィールーズ・シャー・トゥグルクの治世は、トゥグルク朝の衰退期にあたりましたが、彼の内政重視の政策は、王朝の安定に一定の役割を果たしました。社会福祉の充実や都市建設などの業績は、後世にも評価されています。

参考文献
フランシス・ロビンソン 著、月森左知 訳『ムガル皇帝歴代誌 インド、イラン、中央アジアのイスラーム諸王国の興亡（1206年 - 1925年）』創元社、2009年。

関連項目
トゥグルク朝

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