フイチン再見!

『フイチン再見！』：昭和を駆け抜けた女流漫画家の生涯

村上もとか氏による漫画『フイチン再見！』は、実在の女流漫画家、上田トシコ氏の生涯を描いた伝記漫画です。2013年から2017年にかけて『ビッグコミックオリジナル』で連載され、2014年には日本[[漫画家協会賞]]優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

上田トシコと漫画界

本作は、膨大な資料や関係者への取材に基づき、上田トシコ氏の波乱に満ちた人生を詳細に描写しています。少女漫画家としての成功、戦前戦後の激動期を生き抜いた経験、そして多くの漫画家たちとの交流—。上田氏を取り巻く環境や、当時の社会情勢、女性の生き方といった多角的な視点から、日本の漫画史を深く掘り下げています。

村上もとか氏は、アシスタント時代にパーティーで上田氏と出会い、その凛とした姿に強い印象を受けました。後に『龍-RON-』の取材を通して親交を深め、上田氏の生き様、戦前戦後の漫画界の苦労話に感銘を受け、本作の構想を練り始めます。

登場人物とエピソード

作品には、上田氏と交流のあった多くの漫画家が実名で登場します。松本かつぢ氏に師事した経験、長谷川町子氏との交流、手塚治虫氏との友情、赤塚不二夫氏との中国訪問、ちばてつや氏との親交など、数々のエピソードが描かれています。それぞれの漫画家との出会いや、仕事を通して築き上げた絆、時にはぶつかり合いながらも刺激し合った関係性が丁寧に描かれ、当時の漫画界の活気や人間関係を鮮やかに浮かび上がらせます。

また、女流漫画家の親睦会「1ダースの会」のメンバーである牧美也子氏、水野英子氏、わたなべまさこ氏、今村洋子氏、細川千栄子氏、水谷たけ子氏なども登場し、彼女たちとの交流を通して、上田氏の女性としての側面も描かれています。さらに、画家・向井潤吉氏との出会いなど、漫画界以外の交友関係も描かれることで、上田氏の幅広い人脈と豊かな人生観が伝わってきます。

複数の視点からの評価

里中満智子氏は、本作を単なる伝記漫画ではなく、当時の社会情勢や女性の生き方に迫る作品と評しています。ちばてつや氏は、丁寧な取材に基づいた本作を、昭和に生きた人々の記録としても貴重な作品であるとブログで述べています。また、『フイチンさん』を読んでいた世代の鹿島茂氏は、本作が同作品ファンの好奇心を満たすだけでなく、男社会の中で道を切り開こうとする女性の生き方の模範を示すものだと指摘しています。

村上もとか少年時代と『フイチンさん』

村上もとか氏は、少年時代に『少女クラブ』で連載されていた上田トシコ氏の作品『フイチンさん』と出会い、その魅力に魅了されました。この出会いが、後に本作を描くきっかけの一つとなっていることが語られています。

まとめ

『フイチン再見！』は、上田トシコ氏の人生を通して、昭和という激動の時代を生きた人々の生き様、そして日本の漫画史の一端を垣間見ることができる、感動と学びに満ちた作品です。緻密な取材と丁寧な描写によって、読者に深い感銘を与える、一級の伝記漫画と言えるでしょう。

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