フェデリコ2世ナポリ大学

イタリア南部に位置する古都ナポリに、フェデリコ2世ナポリ大学はキャンパスを構える国立の高等教育機関です。その正式名称はイタリア語でUniversità degli Studi di Napoli Federico IIといい、英語ではThe University of Naples Federico IIと表記されます。日本では一般的にナポリ大学の名で親しまれています。この大学は、1224年に神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世（兼シチリア王）の勅令によって創設されました。これは、中世ヨーロッパにおいて、国家権力によって設立された最初の大学として特筆されるものです。設立者であるフリードリヒ2世のイタリア語名「フェデリコ」が、現在の大学名に冠されています。

大学創設の背景には、当時の神聖ローマ皇帝でありシチリア王でもあったフリードリヒ2世の強い意志がありました。彼は、教皇権力の庇護のもと発展していたボローニャ大学のような自律的な学問府に対抗し、自身の統治する王国に、国家によって管理される高等教育機関を設けることを目指したのです。設立にあたっては、優秀な学者を招聘するために高額な謝礼を用意し、多くの学生が集まるよう様々な特典を学生に付与しました。しかしながら、その運営は厳格な国家統制のもとに置かれていました。大学の最高監督権は、皇帝が任命する国家のチャンセラーが掌握しており、大学が君主権力に完全に隷属していた点は、教員組合が主導したパリ大学や、学生組合が運営に大きな影響力を持っていたボローニャ大学といった、同時代に隆盛を誇った他の主要大学とは大きく異なる特徴でした。当時、ナポリ大学で学術の中心を担っていたのは、ボローニャで学位を取得したシチリア王国出身の法学者たちでした。

設立当初のナポリ大学は、必ずしも順調な歩みとは言えませんでした。創設からわずか数年後の1231年には、早くも医学部が閉鎖される事態に陥ります。1253年には、ナポリでの再建を断念し、全ての学部をサレルノ大学に移転させ、歴史あるサレルノの医学校と統合しようとする試みが行われましたが、これも成功しませんでした。このため、再びナポリでの大学再建を目指すことになります。1258年、シチリア王マンフレーディの治世のもと、大学はナポリへと戻されましたが、医学校だけはサレルノに残されたままでした。最終的に、1266年にシチリア王シャルル・ダンジュー（イタリア語名カルロ1世）によって本格的な再建が行われ、ナポリ大学はようやくその教育・研究機関としての機能を本格的に発揮し始めました。

近年では、1987年に大学名がそれまでの「ナポリ大学」から、設立者である皇帝の名を冠した「フェデリコ2世・ナポリ大学」へと正式に変更されています。

現在のフェデリコ2世ナポリ大学は、多岐にわたる学術分野を擁する総合大学として発展しており、具体的には以下の13学部によって構成されています。人文科学系の学部として人文学部、法学部、政治学部、社会学部、経済学部があります。建築学部と工学部は技術系分野をカバーし、自然科学分野では理学部、生命科学部が設置されています。また、生命科学や医療・農学に関連する学部として、農学部、薬学部、医学部、獣医学部が存在し、広範な学問領域を提供しています。

もう一度検索