フェナキストスコープ

フェナキストスコープ（Phenakistoscope）は、1831年にベルギーのジョゼフ・プラトーとオーストリアのジーモン・フォン・シュタンプフェルがほぼ同時に発明した、初期のアニメーション装置です。ゾートロープ（回転のぞき絵）の先駆けとなるもので、日本語では「おどろき盤」という愛称でも知られています。この名称は、1970年代にフェナキストスコープを復元した古川タク氏が、その見た目から「驚き盤」と名付けたことに由来します。

一般的なフェナキストスコープは、中心軸に垂直に取り付けられた回転円盤を基本構造としています。円盤には、アニメーションの連続したコマとなる絵が描かれており、各コマの間にはスリット（隙間）が設けられています。この円盤を回転させ、描かれた絵を鏡に映し、スリットを通して見ると、あたかも絵が動いているように見えるという仕組みです。これは、人間の目が連続した画像を認識する際に、残像効果によって動きを知覚する「仮現運動」を利用したものです。スリットは、回転による像のブレを防ぎ、より鮮明な動きを作り出す役割を果たします。

フェナキストスコープには、円盤に直接絵とスリットを配置するタイプの他に、絵が描かれた円盤とスリットがある円盤を別々にしたものもあります。後者は鏡を必要としないという利点がありますが、操作がやや複雑になるという難点があります。ゾートロープやプラキシノスコープなどの他の初期アニメーション装置とは異なり、フェナキストスコープは一度に一人しか楽しむことができません。

フェナキストスコープの名称は、ギリシャ語の「φενᾱκῐστῐκός (phenākistikós)」（騙す）と「ὄψ(óps)」（目）の組み合わせに由来します。これは、この装置が人間の目を「騙し」、静止画を動いているように見せるという特性を端的に表しています。

この歴史的な発明は、映画の歴史においても重要な位置を占めており、Flanders International Film Festivalでは、映画製作に貢献した人物に「Special Honorary Joseph Plateau Award」として、プラトーが作ったオリジナルのフェナキストスコープのレプリカが贈呈されています。

関連する技術や玩具としては、パラパラマンガ、プラキシノスコープ、ソーマトロープ、回転のぞき絵、ストロボスコープなどがあります。これらの技術や玩具は、視覚現象を利用して動きを表現するという共通のアイデアに基づいています。

参考文献

Collection of simulated phenakistiscopes in action - Museum For The History Of Sciences
A picture and further information - North Carolina School of Science and Mathematics (NCSSM)
An exhibit of similar optical toys
日本工学院専門学校 CG映像科 驚き盤実習作品

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