フェニ

フェニ：ゴアの太陽が育むカシューアップルの蒸留酒

フェニ（Feni）は、インドのゴア州でのみ製造・販売が許可されている、カシューアップル（カシューの果肉）を原料とした蒸留酒です。地理的表示（GI）登録されており、その製法と味わいはゴアの風土と深く結びついています。

フェニとは

カシューアップルの果汁を発酵させたものを2回蒸留して造られる、ゴアの伝統的な地域酒です。1回蒸留したものは「ウラック」と呼ばれ、フェニとは区別されます。フェニという名前は、現地のコンカニ語で「泡」を意味し、高い位置から注ぐと泡立つ様子に由来すると言われています。

伝統的な製造方法

フェニの製造は、カシューの収穫期である3月から5月にかけて行われます。ゴアでは、カシューは無農薬、化学肥料なしで栽培されており、完熟して自然に地面に落ちたカシューアップルのみを使用します。

1. 果汁の発酵： 採取したカシューアップルの果汁を発酵させます。
2. 一次蒸留（ウラック）： 発酵した果汁を蒸留し、「ウラック」と呼ばれる液体を抽出します。
3. 二次蒸留（フェニ）： ウラックに、さらに発酵させたカシュー果汁を加えて再度蒸留し、フェニが完成します。

アルコール度数は40度を超えるものが多く、ゴアの温暖な気候下でも長期保存が可能です。フェニとウラックは、家庭で醸造されることはほとんどなく、農家が副業として醸造したものを直接購入するのが伝統的な方法です。レストランやバーで提供されるフェニも、醸造した農家の情報が明示されていることが多く、飲み比べを楽しむことができます。

多様な飲み方

ゴアの人々は、フェニを様々な方法で楽しみます。

ストレート： フェニ本来の風味を味わうことができます。
ソーダ割り、ライムソーダ割り： より爽やかな飲み口になります。

ウラックは、炭酸水とライムソーダで割り、ライム、青唐辛子と塩を加えて飲むのが定番です。この飲み方は、ウラックの風味を引き立て、ゴアの熱い気候にぴったりです。

フェニの歴史と現状

カシューは南米原産の植物で、16世紀にポルトガル人によってブラジルからゴアに持ち込まれました。同時期に、ブラジルにはサトウキビが持ち込まれ、カシャーサなどの酒が生まれました。ゴアでは、16世紀にはフェニが造られるようになり、以来、通過儀礼や儀式の際に飲まれたり、風邪や熱に効く薬として利用されてきました。

カシューアップルの果汁以外にも、ココヤシの樹液を原料としたフェニや、薬効を期待してスパイスを加えて蒸留したフェニも存在します。しかし、地域酒であるフェニは、ウイスキーなどの外国産の酒に比べて地位が低く見られがちで、製造者と消費者が減少傾向にあります。

近年では、ハンセル・ヴァズが酒販店で一般流通するフェニを製造する「カズーロ（Cazulo）」を立ち上げるなど、新たな動きも見られます。

フェニは、単なる酒ではなく、ゴアの歴史、文化、人々の生活に深く根ざした存在です。その独特な風味を味わい、ゴアの風土を感じてみてください。

参考情報

* Cazulo)

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