フェラーリ・150°イタリア

フェラーリ150° イタリア：2011年シーズンの闘い

2011年、スクーデリア・フェラーリは、イタリア統一150周年を記念して開発されたF1マシン「フェラーリ150° イタリア」でF1世界選手権に参戦しました。当初は「F150」という名称でしたが、フォードとの商標権問題により「F150th Italia」を経て、最終的に「150° Italia」に決定しました。このマシンは、2010年1月から開発が始まり、マラネッロの自社風洞だけでなく、外部風洞も活用することで、FOTAのリソース制限協定下でも効率的な開発を進めました。

マシンの特徴と開発

150° イタリアは、前年モデルからノーズの高さを上げ、モノコック形状を改良。フロントサスペンションの配置も変更され、空力性能の向上を目指しました。2010年シーズンに主流だったFダクトやダブルディフューザーがレギュレーションで禁止されたため、リアエンドは完全に新規設計されました。リアサスペンションは、他チームが採用したプルロッド方式ではなく、フェラーリ独自のプッシュロッド方式を継続。プッシュロッドの角度とサスペンションユニットの位置を最適化することで、リアエンドの高さを抑える工夫が凝らされました。

排気システムも改良され、レッドブルRB6と同様に、排気管を延長した上で、サイドポッド内部に垂直な分岐管を追加することで、排気吹きつけ効果を高める設計が施されました。また、KERSシステムは、マニエッティ・マレリと共同開発され、小型軽量化を実現。燃料タンク内への搭載も実現しています。エンジンの開発は凍結されていましたが、信頼性向上とKERS搭載のための改良が継続的に行われました。バルブ周りのニューマチックシステムや、KERS用のドッキングシステム、クランクシャフトなども新しく設計・導入されました。

日本へのメッセージ

2011年シーズン開幕戦のオーストラリアGPでは、東日本大震災の被災者を励ますため、フロントウィング支持板に「ガンバレ！日本」のメッセージと日本国旗が描かれました。これは、フェラーリのF1マシンに日本国旗が描かれた初めての事例となりました。さらに、アロンソとマッサ両ドライバーから被災者への応援メッセージが発信され、チャリティオークションへの参加など、被災地支援にも積極的に取り組みました。

2011年シーズンの戦い

150° イタリアは、ウィンターテストでは好調で、レッドブルと優勝争いを繰り広げると期待されました。しかし、シーズンを通してレッドブルとマクラーレンの後塵を拝することとなり、イギリスGPでのアロンソの1勝にとどまり、3年連続でチャンピオン獲得を逃しました。

マシンの強みは、ロングランでのペースの良さでした。しかし、タイヤのウォームアップ性能に課題があり、予選や低温・ウェットコンディションでのパフォーマンスは低迷しました。特に、ピレリタイヤのハードコンパウンドを機能させることに苦労し、戦略面でも苦戦を強いられました。開発においても、自社風洞実験結果の誤差やブロウンディフューザー開発の遅れが、序盤の不振の一因とされています。

シーズン終盤では、翌年以降の開発に注力。新型フロントウィングのテスト中に発生した激しい振動は、「フレキシブルウィング疑惑」として話題を呼びました。チーフデザイナーのニコラス・トンバジスは、過去数年間のデザインが保守的だったことを認め、2012年シーズンに向けてよりアグレッシブな設計を目指すとコメントしています。

スペック

シャーシ:
シャーシ名：150° イタリア
構造：カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック
ブレーキ：ブレンボ
サスペンション：前後プッシュロッド
ホイール：BBS 13インチ
タイヤ：ピレリ
ギアボックス：フェラーリ製7速セミオートマチック

エンジン:
エンジン名：フェラーリ Tipo056
タイプ：V型8気筒
排気量：2,398cc
最高回転数：18,000rpm
重量：95kg
燃料：シェルVパワー
潤滑油：シェル Helix Ultra

150°イタリアは、イタリア統一150周年を記念した、フェラーリの技術と情熱が詰まったマシンでした。その開発過程、そしてシーズン中の戦いを通じて、F1における開発競争の激しさと、勝利への飽くなき追求を改めて感じさせるマシンと言えるでしょう。

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