フェラーリ・400

フェラーリ 365GT4 2+2、400、412：長く愛されたV12 グランツーリスモ

イタリアのスポーツカーメーカー、フェラーリは、1972年から1989年にかけて、365GT4 2+2、400、412という3つのモデルを生産しました。いずれも2+2シーターのグランツーリスモで、基本的なボディとシャシ設計を共有する兄弟車と言えるでしょう。これらのモデルは、エレガントなデザインとパワフルなV12エンジン、そして上質なインテリアにより、長きに渡って愛され続けました。

365GT4 2+2：実用性と豪華さを兼ね備えたGT

365GT4 2+2は、1971年に登場した365GTC/4の後継として開発されました。365GTC/4は、365GTB/4（デイトナ）のシャシを用いた2+2モデルでしたが、スタイリングが不評で、生産台数もわずか500台にとどまりました。そこで、より洗練されたデザインと高い実用性を求めて365GT4 2+2が誕生したのです。

ピニンファリーナによるデザインは、ファストバックの365GTC/4とは異なり、2ドアセダンを思わせるクリーンでエレガントなスタイルが特徴です。このデザインは時代を超越した魅力を持ち、長い生産期間に貢献しました。エンジンは、デイトナと同じ伝統の60度V型12気筒を搭載。最高出力は340PSを発生させ、デイトナの生産終了後は、フェラーリ唯一のフロントV12エンジン搭載車となりました。

400：排気量拡大とオートマチックトランスミッションの採用

1976年、排気量が4,823ccに拡大されたモデルが400として登場しました。外観上の大きな変更点は、テールランプが6灯から4灯になった点です。そして、フェラーリとして初めて3速オートマチックトランスミッション（ゼネラルモーターズ製ターボ・ハイドラマティック）がオプション設定されました。これは、当時としては画期的なことで、多くのユーザーに受け入れられ、AT仕様が主流となりました。日本市場にはAT仕様のみが導入されました。

400i：燃料噴射システムの採用と環境性能の向上

1979年には、ボッシュKジェトロニック燃料噴射システムを搭載した400iが登場。オートマチックトランスミッションとの相性が改善され、実用性が向上しました。また、排ガスもクリーンになりましたが、最高出力は310PSに若干低下しました。日本市場への導入は、400同様、AT仕様のみでした。

412：更なる排気量アップと近代的な装備

1985年のモデルチェンジでは、エンジン排気量が5,12BBと同じ4,943ccに拡大され、モデル名は412に変更されました。これにより、最高出力は340PSに回復しました。トランクスペース拡大のため、ボディ後端が若干ハイデッキ化されたほか、内装デザインも変更され、より現代的な印象となっています。また、フェラーリとしては初めてABSが標準装備されました。日本への導入は、これまでと同様にAT仕様のみでした。

412の生産終了と後継モデル

1989年に生産が終了した412の後継モデルは、1992年に登場した456GTです。18年間に渡って生産された412の成功は、エレガントなデザイン、豪華なインテリア、そして魅力的なV12エンジンによるものでした。

特注モデル：4ドアモデルとメーラS

4ドアモデルは、アメリカの複数のコーチビルダーによって製作されました。また、1982年には、サウジアラビアの王子の注文を受けて、ミケロッティが400iをベースに特注モデル「メーラS」を製作しました。このモデルの内外装デザインは、当時ミケロッティに在籍していた日本人チーフデザイナー、内田盾男氏によるものです。

フェラーリ365GT4 2+2、400、412は、それぞれの時代の技術とデザインを反映しながら、長く愛された名車として記憶されています。これらのモデルは、フェラーリの伝統と革新が凝縮された、真のグランツーリスモと言えるでしょう。

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