フェラーリ・P

フェラーリPシリーズ：栄光と挫折の軌跡

フェラーリPシリーズは、1960年代から1970年代にかけて製造された、イタリアの自動車メーカー、フェラーリが開発したプロトタイプレーシングカーです。PはPrototipo（試作品）を意味し、スクーデリア・フェラーリのワークスカーとして、世界耐久選手権を舞台に活躍しました。限られた予算の中で技術革新を続け、数々の名勝負を繰り広げた、フェラーリの挑戦の歴史が凝縮されていると言えるでしょう。

Pシリーズの特徴と生産背景

Pシリーズの生産台数は70台に満たず、車体番号の末尾は必ず偶数でした。これは、GTカーの車体番号が奇数であることと合わせて、当時のフェラーリの伝統と言えるでしょう。また、製造順に車体番号が割り当てられたため、完成順や発表順とは必ずしも一致しません。事故や改修、次世代マシンへの部品流用なども多く、イタリアの零細自動車メーカーであった当時のフェラーリの資金不足が背景にありました。市販車の販売がレース活動資金を支えるという現実を反映しています。

1962年のレギュレーション変更とGTプロトタイプの誕生

1962年、国際自動車連盟（FIA）は世界スポーツカー選手権（WSCC）をGTクラスのみに限定することを決定しました。これに対し、ル・マン24時間レース主催者は、GTクラスではレースの魅力が薄れるとして反発。結果、1962年シーズンは特例としてプロトタイプカーの出場が認められ、1963年にはプロトタイプが正式カテゴリーとして追加。GTプロトタイプカテゴリーが誕生しました。年間最低生産台数の規定がなく、自動車としての最低限の機能を備えていれば高度なレーシングマシンを製作できるレギュレーションでした。チャンピオンシップポイント自体は与えられませんでしたが、耐久レースの優勝争いはプロトタイプカーが中心となりました。

各モデルの詳細

250P (1963年): 250TRをベースにミッドシップ化。ディーノ246SPのスペースフレームに、3.0L V12エンジンを搭載。セブリング12時間レース、ル・マン24時間レースで優勝し、1963年のマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得しました。1964年には排気量アップ版が登場しました。

275/330P (1964年): エンジンの排気量の違い（3.3Lと4.0L）によるバリエーション。250Pをベースに、フロントウインドスクリーンやエンジンフードのデザインを変更。275Pはニュルブルクリンク1000kmなど、330PはグッドウッドTTなどで優勝しました。シャーシNo.0824は後に365Pに改造されました。

250LM (1963年): 250Pの派生型。250GT系のエンジンを搭載し、主にプライベートチームに販売されました。1965年のル・マン24時間レースで総合優勝を飾るなど、プライベーター向けのプロトタイプカーとして最も成功したモデルの一つです。

275/330P2 (1965年): 275/330Pの改良型。DOHC V12エンジンを搭載し、スペースフレームからセミモノコック構造に変更。セブリング12時間レースなどでは優勝しましたが、ル・マン24時間レースでは3台全車リタイアという結果に終わりました。

365P2 (1965年): 275/330P2をベースに4.4L SOHCエンジンを搭載したプライベートチーム向けモデル。1966年には365P2/3へと発展しました。

330P3 (1966年): ル・マン24時間レースでのフォードGT40との戦いを意識して開発されました。燃料噴射を採用したDOHC V12エンジンを搭載。モンツァとスパでは優勝しましたが、ル・マンではフォードGT40に敗れ、全車リタイアとなりました。

412P (1967年): 330P4のバックアップ用としてプライベートチームに供給されたモデル。330P3をベースにキャブレター仕様に変更されています。

330P4 (1967年): 330P3の後継モデル。フォードGT40に対抗するため、エンジンの改良、セミモノコック構造の採用など、大幅な改良が加えられました。1967年のデイトナ24時間レースで1-2-3フィニッシュを達成。ル・マン24時間レースではフォードGTマークIVに敗れましたが、ブランズハッチでのBOAC500で2位に入り、世界選手権タイトルを獲得しました。

350P (1967年): 330P4をCan-Am用に改造したモデル。4.2Lエンジンを搭載しましたが、目立った戦績は残せませんでした。

612P (1968年): Can-Am参戦用に開発されたモデル。6.2L V12エンジンを搭載。開発は遅れ、実戦投入は最終戦ラスベガスのみでした。その後1969年には改良が加えられ、シリーズ後半戦では表彰台を獲得しました。

712P (1971年): 612Pの改良型ではなく、512SをベースにCan-Am仕様に改造。ワトキンズ・グレンで健闘しましたが、その後は参戦機会が少なかったです。

312P (1969年): 1968年のレギュレーション変更により、フェラーリが1年ぶりに耐久レースへ復帰した際に投入。F1用312エンジンの改良版を搭載。開発期間が短かったため、信頼性面で課題を残しました。

512S (1970年): グループ4規定に対応した5Lモデル。612Pをベースに、短期間で開発されました。デイトナ24時間レースで3位入賞など、一定の成績を収めましたが、ポルシェ917には敵わずチャンピオンシップ獲得はなりませんでした。

512M (1971年): 512Sの改良型。空力性能向上のためボディワークが大幅に変更されました。ペンスキー・レーシングによって高い競争力を発揮しました。

312PB (1971年): 3Lプロトタイプ規定に対応したモデル。1972年には世界メーカー選手権を制覇しました。フェラーリ最後のワークスプロトタイプカーです。

499P: 情報不足のため記述できません。

まとめ

フェラーリPシリーズは、限られた資源の中で技術革新と勝利を目指し続けたフェラーリの挑戦の歴史を示す象徴的な存在です。各モデルの開発背景、技術的な特徴、レースでの活躍、そしてその後の遍歴を知ることで、フェラーリの技術力と情熱を改めて感じることができます。それぞれのモデルの成功と失敗は、後のフェラーリのスポーツカー開発に大きな影響を与えたと言えるでしょう。各車の詳細なスペックや歴史は、専門書籍やウェブサイトなどを参照ください。

もう一度検索