フェリックストウ F.5

フェリックストウ F.5 (Felixstowe F.5)

フェリックストウ F.5は第一次世界大戦の終息期にイギリスで開発された飛行艇で、当時の海軍航空隊の重要な資産として脚光を浴びました。フェリックストウ海軍工廠によって製作されたこの機体は、アメリカのカーチス社が設計したH4やH12を基にしており、その進化の過程には多くの技術的な改善が見られます。

開発の経緯

この機体が生まれた背景には、第一次大戦発生時の緊急なニーズがありました。イギリス海軍は、ドイツのツェッペリン飛行船による空襲の脅威を防ぐため、遠距離偵察を行う飛行艇が必要でした。初めて導入されたカーチスH4は、その目的に向けた第一歩でしたが、北海の厳しい気象条件においてはその性能に限界がありました。

そこで、テストパイロットのジョン・ポートは、より強力な発動機を搭載し、機体構造の改良を進めることに決定。これによりH4やH12を基にしたF型の開発がスタートしました。F.5型はその中で最も大型に成長し、1918年5月に初飛行を果たしました。

機体構造と設計

F.5の艇体は木製合板で構成されており、特に航行性能を向上させるためにV字型の底部設計が施されました。この形状の採用により、水面からの離着水がしやすくなりましたが、機体の大型化にあたって余計な部品はF.3型を踏襲したため、動力的に若干の不足が生じました。そのため、後に発動機がロールス・ロイス イーグルVIIからVIIIに換装されることとなりました。

運用と実績

量産体制はショート社などによって確立されましたが、第一次大戦中には実戦への投入は叶いませんでした。それでも戦後は、フェリックストウシリーズの初期のモデルを補完する形で多くの飛行艇が配備され、1925年までの間にその役目を果たしました。この機体は米国とカナダでも改良され、特にエンジンを換装したF5L型として生産されていました。

日本での導入

日本は1919年にこの機体の国産化を目指し、ショート社とライセンス契約を締結しました。1920年には完成機8機を購入し、翌年には技術者を招聘して本機の製造技術を学ぶ講習を行いました。その結果、1923年には「エフ」五飛行艇として正式に制式採用され、日本国内で合計60機が生産されました。

この機体は日本の最初の制式飛行艇であり、洋上での長時間飛行訓練や対艦攻撃の実験にも活用されました。さらに、後継機である一五式飛行艇の設計にも影響を及ぼしました。

機体性能

• - 全長: 15.03 m
• - 全幅: 31.59 m
• - 全高: 5.80 m
• - 機体重量: 3,720 kg
• - 総重量: 5,830 kg
• - 発動機: ロールス・ロイス イーグルVIII（水冷V型12気筒 360 hp × 2）
• - 最大速度: 170 km/h
• - 実用上限高度: 3,550 m
• - 航続距離: 7時間または8時間
• - 武装: 7.7mm機銃 × 2または4、240 kg爆弾 × 2または爆雷
• - 乗員: 4名

まとめ

フェリックストウ F.5は、その設計から運用に至るまで、航空史において重要な意義を持つ飛行艇です。日本における制式飛行艇の開発に寄与したその足跡は、現在でも多くの航空ファンや研究者によって評価されています。

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