フェリックス・パパラルディ

フェリックス・パパラルディ（1939年 12月30日 - 1983年 4月17日）は、アメリカ合衆国出身の多才な音楽家であり、特に1960年代後半から1970年代にかけて、音楽プロデューサーとして、そして自身が率いるハードロックバンド、マウンテンのベーシスト兼ヴォーカリストとして活躍しました。彼のキャリアは、クラシック音楽の素養に根差したアレンジャーとしての活動から始まり、やがてロック史に名を刻むプロデューサー、そしてバンドリーダーへと展開していきました。

生涯と初期キャリア

ニューヨーク州ブロンクス区で生まれたパパラルディは、マンハッタンの音楽専門高校を経て、ミシガン大学でクラシック音楽を深く学びました。大学卒業後ニューヨークに戻り、アレンジャーや音楽プロデューサーとしての道を歩み始めます。1960年代前半には、グリニッジ・ヴィレッジのフォークシーンに関わり、トム・パクストンやヴィンス・マーティン・アンド・フレッド・ニールといったアーティストの作品でベースやギタロンを演奏したり、ストリングス編曲を手掛けるなど、実績を積んでいきました。

1966年にはRCAレコードと契約したヤングブラッズのアルバム制作にプロデューサーとして携わるなど、徐々にその才能が注目されるようになります。

プロデューサーとしての成功

パパラルディのプロデューサーとしての名声を決定づけたのは、1967年にアトランティック・レコードのトム・ダウドの推薦で手掛けたイギリスのロックバンド、クリームのセカンド・アルバム『カラフル・クリーム』です。彼はこのアルバムでプロデュースに加え、エリック・クラプトンやゲイル・コリンズと共に「ストレンジ・ブルー」を共作しました。さらに続く『クリームの素晴らしき世界』（1968年）や解散アルバム『グッバイ・クリーム』（1969年）でもプロデューサーを務め、キーボードやヴィオラなどの楽器演奏でも貢献しました。クリーム解散後も、ベーシストだったジャック・ブルース初のソロ・アルバム『ソングス・フォー・ア・テイラー』（1969年）をプロデュースするなど、彼らのサウンドメイキングに深く関わりました。

また、自身のレーベルであるウィンドフォール・レコードを設立し、ヴァグランツのギタリストだったレスリー・ウェストのソロ・アルバム『マウンテン』（1969年）をプロデュース、作曲、演奏面でもサポートしました。

マウンテンでの活動

レスリー・ウェストのソロ・アルバム制作を機に、パパラルディはウェスト、ドラマーのN.D.スマート、キーボーディストのスティーヴ・ナイトと共に、ハードロックバンド「マウンテン」を結成しました。1969年7月にライブデビューを果たし、わずか結成1ヶ月後の8月には伝説的なウッドストック・フェスティバルに出演しました。その後、ドラマーがカナダ人のコーキー・レイングに交代し、バンドは本格的な活動を開始します。

マウンテンでは、パパラルディは主にベース演奏とプロデュースを担当し、作曲やリード・ヴォーカルはウェストと分担しました。彼の妻ゲイル・コリンズもアルバムのアートワークや衣装デザイン、そして作曲に協力しました。マウンテンは1970年代前半に3枚のスタジオ・アルバムを発表しましたが、1972年1月、パパラルディが慢性の聴覚障害などの健康問題を理由にツアー活動からの離脱を希望したことから、バンドは一度解散を迎えます。当時の彼は薬物中毒に苦しんでいたとも報じられています。解散後にはウッドストック出演時の音源を含むライブ・アルバムもリリースされました。

1973年にはベドラムのアルバムをプロデュースするなど外部活動も行いましたが、同年8月にはウェストとレイングと共にマウンテンを再結成し、初の日本公演を行いました。1974年には日本公演のライブ・アルバムや新作スタジオ・アルバムを発表し、国内ツアーも行いましたが、同年末に再び解散。ウィンドフォール・レコードも閉鎖されました。

その後の活動と晩年

マウンテン解散後も、パパラルディは音楽活動を続けました。1975年8月には日本のワールド・ロック・フェスティバルでジョー山中と共演。この際共演した日本のバンド、クリエイションをアメリカに招き、コラボレーション・アルバム『クリエイション・ウィズ・フェリックス・パパラルディ』（1976年）を制作・発表しました。同年にはクリエイションと共に日本やアメリカでの共演ライブも行っています。

1978年にはコーキー・レイング、イアン・ハンター、ミック・ロンソンらとバンドを結成するもアルバムリリースには至らず。1979年にはエリック・ゲイル、リチャード・ティー、バーナード・パーディといった著名なセッション・ミュージシャンを迎えてソロ・アルバム『ドント・ウォリー・マ』を発表しました。

突然の死

パパラルディの生涯は、1983年 4月17日、わずか43歳で突然幕を閉じました。マンハッタンの自宅アパートで、妻のゲイル・コリンズに首を撃たれて死去したのです。彼は故郷であるブロンクスのウッドローン墓地に埋葬されました。

コリンズは第二級殺人の罪で訴追されましたが、裁判では殺意を否定し、銃の練習中の事故であったと主張。結果として過失致死罪で有罪となり、懲役4年の実刑判決を受けました。彼女は刑期の半分を終えて仮釈放された後、2013年にメキシコで死去しています。

フェリックス・パパラルディは、その短い生涯の中で、プロデューサーとして多くの名盤を生み出し、マウンテンというハードロック史に残るバンドを率いるなど、アメリカン・ロックシーンに多大な貢献をしました。クラシック音楽の素養とロックのダイナミズムを融合させた彼のサウンドは、後世のアーティストにも影響を与えています。

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