フェルディナント・ズヴォニミル・ハプスブルク＝ロートリンゲン

フェルディナント・ハプスブルク＝ロートリンゲン：レーシングドライバーとしてのキャリアと皇族としての出自

フェルディナント・ハプスブルク＝ロートリンゲンは、1997年オーストリアのザルツブルクに生まれました。父はハプスブルク＝ロートリンゲン家当主のカール・ハプスブルク＝ロートリンゲン、母はイギリス系オーストリア人のフランツェスカです。ザグレブで洗礼を受けた彼は、オーストリアとハンガリーの二重国籍を持ち、ドイツ語と英語のバイリンガルとして育ちました。両親は2003年に別居、2017年に離婚しています。

幼少期はザルツブルクで過ごした後、ウィーンに移住。ダニューブ・インターナショナルスクールで教育を受け、17歳で国際バカロレアを取得しました。大学進学は予定していません。

多彩な才能を持つフェルディナント少年は、テニス、フェンシング、カンフーにも挑戦しましたが、8歳の時に父親に連れられたカート場でモータースポーツの魅力に開眼。室内カートにのめり込み、本格的にレーシングカートの世界へと足を踏み入れました。

モータースポーツへの情熱：カートからDTMへ

12歳で屋外カートを始め、14歳にはオーストリアのレーシングカートチーム「スピードワールドアカデミー」に加入。ROTAXジュニアカテゴリーで経験を積み、2012年には下オーストリアチャンピオン、2013年には下オーストリアおよびハンガリーチャンピオンに輝き、2014年にはROTAX DD2クラスでオーストリアチャンピオンに上り詰めました。

2014年から四輪レースへ挑戦。フォーミュラ・ルノー1.6ノーザン・ヨーロピアン・カップに参戦し、全戦完走を果たしてランキング4位を獲得。その後、フォーミュラ・ルノー2.0、トヨタ・レーシング・シリーズへとステップアップし、着実に経験と実績を積んでいきます。

2016年にはフォーミュラ3に参戦。ユーロフォーミュラ・オープン選手権で年間ランキング2位（2勝）、ルーキークラスでランキング1位を獲得。さらにスペインF3選手権でもランキング3位に入るなど、才能を爆発させました。同年、マカオグランプリにも初参戦を果たしています。

2017年にはヨーロッパ・フォーミュラ3選手権に参戦。ランキング7位（1勝）を獲得。マカオグランプリでは最終ラップで首位を走行するドライバーをオーバーテイクするも、クラッシュにより4位という結果に終わりました。

2018年には、ヨーロッパ・フォーミュラ3選手権に継続参戦する傍ら、GTカーでのレース経験も積み、同年11月にはアウディからDTM（ドイツツーリングカー選手権）のテストに参加。

そして2019年、アストンマーティンからDTMに参戦。ヨーロッパF3などとは異なり、「Ferdinand von Habsburg」としてエントリー名を変更し、世界最高峰のツーリングカーレースで活躍しています。

皇族としてのアイデンティティと将来像

フェルディナントは「殿下」と呼ばれることに否定的な姿勢を示しており、オーストリアの歴史にも必ずしも詳しくないと語っています。インターナショナルスクールで育った彼は、同級生らに「ハプスブルク」の意味を理解されていない環境にあり、父親はそれが無用の負担にならないよう願っていたと話しています。

オーストリア育ちである一方、ハンガリーへの母国意識も持ち合わせています。ハプスブルク＝ロートリンゲン家はハンガリーの王位請求者でもあるため、個人的な親近感からその事実を表明しているそうです。

レース以外の将来展望については、政治に関わるよりも、後進のドライバーを支援することに興味があると述べています。政治には関心を持っているものの、最大の関心事はレーシングドライバーとしてのキャリアであると明言しています。

カート時代から使用しているカーナンバー「62」を好み、可能な限り使用し続けています。オーストリアのレーシングライセンスで参戦していますが、ハンガリーのハンガロリンクでのレースも母国レースと考えているそうです。

彼は、カート時代から同郷のアレクサンダー・ヴルツから指導を受け、マネージャーは母方の従叔父であるジェイミー・キャンベル＝ウォルターが務めています。

フェルディナント・ハプスブルク＝ロートリンゲンは、華麗な家系と並外れたレーシングへの情熱を兼ね備えた、まさに現代のプリンスです。彼の今後の活躍から目が離せません。

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