フェルナンド3世 (カスティーリャ王)

フェルナンド3世：レコンキスタを推進した聖王

フェルナンド3世（1201年 - 1252年）は、カスティーリャ王として、レコンキスタ（国土回復運動）を主導し、イベリア半島におけるキリスト教勢力の拡大に大きく貢献しました。その功績から「聖王」と称えられ、カトリック教会の聖人として崇敬されています。

生涯

フェルナンド3世は、レオン王アルフォンソ9世とカスティーリャ女王ベレンゲラの間に生まれました。両親の結婚は教皇の介入により無効となりましたが、1217年に母方の叔父であるカスティーリャ王エンリケ1世が嗣子なく死去したため、フェルナンドはカスティーリャ王位を継承しました。その後、1230年には父アルフォンソ9世の死によりレオン王位も継承し、レオンとカスティーリャを統一しました。

レコンキスタの推進

当時のイベリア半島南部は、ムワッヒド朝の衰退によりイスラム勢力が分裂していました。フェルナンド3世は、この状況を利用してレコンキスタを積極的に推進しました。

1224年、ムワッヒド朝攻撃を宣言し、ケサダを攻略。その後も、調略と武力を巧みに使い分け、イスラム教勢力の internal conflict に乗じて領土を拡大しました。バイヤーシーとの協力関係を築き、ハエンを攻撃するなど、着実にレコンキスタを進展させました。

1236年にはコルドバを攻略。この攻略はレコンキスタにおける重要な転換点となり、グアダルキビール川流域の多くの町や要塞を奪回するきっかけとなりました。戦後処理に尽力し、コルドバの復興に努めました。

1243年にはムルシアを臣従させ、1246年にはハエンを包囲。ムハンマド1世との間で臣従の誓いを結ばせ、グラナダ王国の領土保全を約束しました。そして、1248年にはセビリアを陥落させ、レコンキスタを事実上完了させました。

レコンキスタ後の課題と死

フェルナンド3世のレコンキスタは、カスティーリャ王国の勢力拡大に大きく貢献しましたが、同時に新たな課題も生じさせました。領土を戦闘に参加した貴族に配分したことで、貴族の力が強大化し、支配体制の基盤が脆弱になりました。また、戦費による経済破綻や、イスラム勢力撤退による産業衰退などの悪影響も発生しました。

1252年、北アフリカ遠征の途上、セビリアで病死しました。彼の死後、息子のアルフォンソ10世が王位を継承し、王国機構の改変という課題に挑むことになります。

人物像と評価

フェルナンド3世は、軍人・政治家として優れた能力を発揮しました。寛大な態度でアンダルス諸都市への降伏条件を提示し、ムスリム住民への配慮も忘れなかったと伝えられています。また、宗教に寛容な一面もあり、「三宗教の王」たることを理想としていました。

その功績から、1671年にカトリック教会によって列聖され、「聖王」の称号を与えられました。今日でも、スペインをはじめとするカトリック圏で広く崇敬されています。

子女

最初の妻ベアトリス・デ・スアビアとの間に、後のアルフォンソ10世を含む10人の子を儲けました。2番目の妻ジャンヌ・ド・ダンマルタンとの間にも、イングランド王エドワード1世と結婚したレオノールを含む5人の子がいました。

遺産

フェルナンド3世のレコンキスタは、イベリア半島の歴史における重要な転換点となりました。彼の功績は、スペインの国土回復とキリスト教文化の隆盛に大きく貢献しました。セビリア大聖堂に埋葬された彼の墓廟には、カスティーリャ語、アラビア語、ヘブライ語、ラテン語で墓碑銘が刻まれ、多民族・多宗教からなる国家という彼の理念を今に伝えています。

もう一度検索