フェンダー・サイクロンII

フェンダー・サイクロンII：個性的なサウンドと高い人気を誇るエレクトリックギター

フェンダー・サイクロンIIは、フェンダー社が2002年7月にデラックスシリーズの一環として発表したエレクトリックギターです。メキシコのエンセナダ工場で生産され、日本市場には2003年に限定数で投入されました。発売当時は94,500円の価格設定でしたが、生産終了後の現在は、中古市場で高値で取引されている人気モデルです。

個性的なデザインと仕様

サイクロンIIは、ムスタングを彷彿とさせるボディシェイプを持ちながらも、いくつかの独自の要素を備えています。まず目を引くのは、ボディトップに施されたレーシングストライプです。これは1960年代後半から1970年代前半のコンペティション・ムスタングを彷彿とさせ、ヴィンテージ感を醸し出しています。

さらに、3基のジャガータイプピックアップを搭載している点も特徴的です。しかし、一般的なジャガーと異なり、ピックアップは弦に対して斜めに配置されています。これは、ソニック・ユースのサーストン・ムーアの改造ムスタングを意識したデザインではないかという説があります。ピックアップセレクターはジャガー同様の六角形プレートに配置された3つのスイッチで、各ピックアップのオン／オフを切り替えられます。すべてのピックアップを同時に使用したり、フロントとリアピックアップを組み合わせたりと、幅広いサウンドメイクが可能です。しかし、スイッチの位置が演奏の邪魔になる可能性があるという欠点も指摘されています。

ボディはムスタングよりも厚く設計されており、シンクロナイズド・トレモロユニットを搭載するために必要な強度を確保しています。また、ボディ表裏にはコンター加工が施され、演奏時の快適性を向上させています。スケールは24 3/4インチと、フェンダーギターとしては珍しく、ギブソン・レスポールと同じ長さです。これはムスタングよりも長く、ストラトキャスターよりも短い、独特のスケールとなっています。弦高調節用イモネジとトラスロッド調整ナットはインチサイズで、メキシコ製フェンダーとしては珍しい仕様です。ヘッドストックには「Cyclone」のモデル名と、サイクロンをモチーフにしたキャラクターが描かれています。

鋭くクリアなサウンド

サイクロンIIのサウンドは、ジャガーピックアップによる高音域の強調されたクリアなトーンが特徴です。3基のピックアップの組み合わせによって、多彩な音色を生み出すことができます。また、シンクロナイズド・トレモロと比較的長いスケールにより、ムスタングやジャガーでは不足しがちなサステインも確保されています。

生産終了とその後

サイクロンIIは2006年に生産が終了しました。しかし、その独特のサウンドとデザインから、中古市場では高い人気を維持し、定価を上回る価格で取引されています。2020年には、スクワイアからサイクロンIIに似た仕様の「Paranormal Series Cyclone」が発売されましたが、ピックアップやレーシングストライプなど、いくつかの違いがあります。

日本のミュージシャンによる使用例

サイクロンIIは、多くのミュージシャンに愛用されています。日本においては、ZONEのMIYU、ナナカラットのTetsuya、BabySitterのYuiなどが使用していることが知られています。

まとめ

フェンダー・サイクロンIIは、ムスタングとジャガーの要素を融合させた個性的なエレクトリックギターです。独特のルックスとサウンド、そして高い演奏性から、多くのミュージシャンを魅了し続けています。生産終了後も高い人気を誇る、コレクターアイテムとしても価値の高いギターです。

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