フェーベ (衛星)

土星の衛星フェーベ

フェーベ（Phoebe）は、土星の第9衛星であり、外側に位置する逆行衛星です。この衛星は、土星の主要な衛星の中でも最も外側にあり、土星の自転とは逆方向に公転しています。また、北欧群と呼ばれるグループに属しています。

発見と命名

フェーベは、1899年3月17日にウィリアム・ヘンリー・ピッカリングによって写真分析で発見されました。最初に写っているのが確認された写真乾板は1898年8月16日に撮影されたもので、この日が発見日とされています。観測はペルーのボイデン天文台で行われ、写真を撮影したのはデリール・スチュワートです。フェーベは、写真分析によって発見された最初の衛星となりました。

この衛星の名前は、ギリシア神話に登場するティーターンの一人、ポイベーに由来します。また、Saturn IXとも呼ばれます。名称を提案したのは発見者であるピッカリングで、土星の衛星の命名慣習に従いフェーベと名付けました。発見者はウィリアム・ヘンリー・ピッカリングですが、発見を報告した論文の著者は兄のエドワード・ピッカリングでした。

観測と探査

フェーベは、ボイジャー探査機が観測しやすい位置にはありませんでした。ボイジャー2号は1981年9月に数時間の観測を行い、220万キロメートルの距離から、暗い表面に明るい領域があることが確認されました。

2004年には探査機カッシーニがフェーベに接近し、詳細な観測を行いました。2004年6月11日には2,068kmの距離を通過し、高解像度の画像を取得しました。カッシーニのミッションでは、ボイジャー2号で得られなかった高精度のフェーベ画像を得ることが優先されており、飛行経路もフェーベに接近するように設計されていました。フェーベの自転周期が約9時間17分と短いため、カッシーニは全表面を観測することができました。この近接観測により、フェーベの質量はわずか0.2%の不確かさで測定されました。

軌道

フェーベは、土星の自転とは逆方向に公転する逆行衛星です。発見から2000年までの100年間以上、土星から最も遠い既知の衛星でした。主要な衛星の中では、イアペトゥスの約4倍の軌道長半径を持っています。また、フェーベの軌道周辺には、同様の軌道を持つ衛星が複数発見されていますが、その中で最も大きなサイズです。

土星の規則衛星は、イアペトゥスを除いて土星の赤道面に非常に近い軌道をもちますが、外側の不規則衛星は大きな軌道離心率を持ち、自転と公転が同期していません（ただし、ヒペリオンは内側を公転していますが同期していません）。

フェーベ環

フェーベ環は土星の環の一つで、土星の赤道面から27度傾いています。土星半径の128倍から207倍の距離に広がっており、フェーベの軌道は土星半径の215倍と、フェーベ環の領域よりやや外側にあります。環の厚さは土星の直径の約20倍です。

フェーベ環の物質は、フェーベへの微小隕石の衝突によって発生した塵が起源と考えられています。そのため、フェーベと同様に逆行軌道で公転しています。内側を順行軌道で公転するイアペトゥスとは逆向きに動いており、この環の物質がイアペトゥスの表面の二面性の要因となっていると考えられています。

フェーベ環は非常に大きいものの、希薄でほとんど見えません。NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡によって発見されました。

物理的特徴

フェーベはほぼ球形をしており、平均直径は213kmです。これは月の約16分の1のサイズで、北欧群の衛星の中では最大です。9時間16分で自転し、土星を約18ヶ月で一周します。土星から離れた軌道を持つため、他の主要な衛星とは異なり、自転と公転は同期していません。表面温度は75K（-198.2℃）です。

内側の土星の衛星は明るい表面を持つことが多いですが、フェーベのアルベドは0.08程度と非常に暗いです。表面は多くのクレーターで覆われており、最大のものは直径80km、クレーター壁は16kmに達します。

フェーベは小さいながらも、形成初期には内部が分化した球形だったと考えられています。その後、内部が固化し、現在の静水圧平衡からわずかにずれた形状になりました。カッシーニの観測データから、フェーベは太陽系誕生から300万年以内に、多孔質の状態で誕生した可能性が示唆されています。内部温度の上昇により内部が陥没して縮み、密度が平均的な土星の衛星よりも40%も高くなった可能性があります。この熱源は放射性同位体によるものと考えられています。

起源

当初、科学者たちはフェーベが土星に捕獲された炭素質の小惑星であると推測しました。炭素質の小惑星は、太陽系が形成された頃の物質で構成されています。しかし、カッシーニによる観測では、フェーベのクレーターに明るさの変化が見られ、表面下に多くの氷が存在することが示唆されました。表面を覆う暗い物質は300～500メートルの厚さと推定され、二酸化炭素も検出されました。

フェーベの組成は50%が岩石と推定され、これは内側の衛星よりも明らかに高い割合です。そのため、科学者たちはフェーベを土星に捕獲されたケンタウルス族の天体だと考えるようになりました。ケンタウルス族は、エッジワース・カイパーベルトに存在していた天体が内側に移動したものです。フェーベは、ケンタウルス族由来の天体として初めて点よりも大きな画像で撮影されました。

フェーベは太陽系誕生後300万年以内にエッジワース・カイパーベルトで形成されたと考えられており、この早期形成によって多くの放射性元素を取り込むことで、現在の形状を作り出すことができたと考えられます。

地形

フェーベのクレーター24個には、ギリシア神話のアルゴー船の乗組員にちなんだ名前が付けられています。最大のクレーターはイアソン、内壁に白い筋状模様を持つクレーターはエルギヌスと名付けられています。平地はポイベの娘レートーにちなみ、レト地域と命名されています。詳細は「List of geological features on Saturn's smaller moons」を参照してください。

地域

フェーベの地域は、ポイベの娘にちなんで名付けられています。

クレーター

フェーベのクレーターは、アルゴナウタイにちなんで名付けられています。

作品

（作品に関する情報があればここに記述します）

出典

（出典に関する情報があればここに記述します）

外部リンク

* ザ・ナインプラネッツ 日本語版（フェーベ）

もう一度検索