フォアリバー造船所

フォアリバー造船所（Fore River Shipyard）は、アメリカ合衆国にかつて存在した著名な造船所です。正式名称は「フォアリバー造船・機関会社（Fore River Ship and Engine Building Company）」で、1884年から1986年まで、約1世紀にわたり造船業を牽引しました。

歴史

フォアリバー造船所は、電話の発明者として知られるアレクサンダー・グラハム・ベルの助手であったトーマス・A・ワトソンによって、1884年にマサチューセッツ州イースト・ブレーントリー近くのウェイマスで創業されました。初期には、小型船舶や蒸気ボイラーなどを製造していましたが、1901年にはクインシーへと拠点を移し、大規模な造船所へと発展しました。

1913年には、鉄鋼大手のベスレヘム・スチールが造船所を買収し、その後も軍艦や商船の建造を続けました。1964年には、ジェネラル・ダイナミクスがベスレヘム・スチールから造船所を取得し、所有者が変わりましたが、運営は続けられました。しかし、1980年代に入ると、アメリカの造船業は衰退の一途をたどり、1986年、フォアリバー造船所は閉鎖されることとなりました。

1994年には、第二次世界大戦で活躍した重巡洋艦「セーラム」(USS Salem, CA-139)が、クインシーの造船所に帰還し、博物館船として保存されることになりました。2004年には、かつての造船所の敷地の一部が、駐車場として自動車ディーラーに売却されましたが、現在もボストンへの通勤者向けのフェリーの発着場として利用されています。

また、フォアリバー造船所は、第二次世界大戦中に広まった「キルロイ参上」という落書きの作者とされるジョン・J・キルロイが、溶接検査官として勤務していた場所でもあります。

主な建造船

フォアリバー造船所では、数多くの軍艦や商船が建造されました。その一部を以下に紹介します。

軍艦

駆逐艦：多数（例：デール級、サンプソン級など）
巡洋艦：多数（例：ペンサコーラ級、ノーザンプトン級など）
戦艦：マサチューセッツ、ノースカロライナ、アラバマなど
空母：レキシントン、サラトガなど

その他

トマス・W・ローソン：7本マストを備えた鋼鉄製スクーナー。当時の大型帆船として有名です。
ウィリアム・L・ダグラス：6本マストの鋼鉄製石炭運搬船。大量輸送を可能にする船舶でした。
コンスティチューション、インディペンデンス：アメリカン・エクスポートライン向けに建造された豪華客船。大西洋航路で活躍しました。

フォアリバー造船所は、アメリカの造船業を代表する存在として、その歴史と技術は今もなお、多くの人々に語り継がれています。

外部リンク

1902年の新聞記事
フォアリバーにおける造船史
米国海軍造船博物館

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