フォッカー V.8

フォッカー V.8

フォッカー V.8は、第一次世界大戦中のドイツで開発された試作戦闘機です。この機体の設計は、先行機であるフォッカー Dr.Iが示した成果を基にしたものです。アントニー・フォッカーは、戦闘機の性能向上を目指し、主翼を五枚に増やすという大胆な提案を行いました。この試みを受けて、エンジニアのラインホルト・プラッツは最初は懐疑的でしたが、最終的には試作機の製造が進められることになりました。

V.8は、新規に製造されたのではなく、同時に開発が行われていた三葉機のV.6から部品を流用して製造されました。この機体は、V.6の操縦席の前にあった三枚の主翼を水平に配置し、プロペラ直後に移動させました。さらに操縦席の後方には、複葉式の主翼を追加することで、タンデム翼構造を持つ五葉機に仕立てられました。そのため、前側の上翼と後ろ側の上翼にはエルロンが設けられ、複葉の上翼には昇降舵が備えられることで、水平尾翼と同様の役割も果たしました。

動力源としては、マシンの性能を引き上げるために、フォッカー Dr.Iで使用されたオーバーウルゼル Ur.IIエンジンやV.6のメルセデス D.IIよりも高出力のメルセデス D.IIIが採用されました。この新しいエンジンにより、V.8は続く性能テストを迎えることになります。

1917年10月、フォッカー V.8は初めて空を舞いました。しかし、その後の約2週間で行われた改良作業においても、優れた性能は得られなかったため、計画は中止されることになりました。最終的には、機体が解体される運命を辿りました。

要目

• - 乗員: 1
• - 全長: 6.8メートル
• - 全高: 2.8メートル
• - 翼幅: 7.7メートル
• - 翼面積: 36.4平方メートル
• - 空虚重量: 464キログラム
• - 運用時重量: 608キログラム
• - 動力: メルセデス D.III 液冷レシプロエンジン (118 kW = 160 hp) × 1

性能

• - 最大速度: 168 km/h
• - 巡航速度: 142 km/h
• - 実用上昇限度: 5800メートル

武装

• - 固定武装: LMG 08/15 7.92mm機銃

フォッカー V.8は、数々の特徴的な設計要素を持ちながら、その性能向上には至らなかったことから、航空機の歴史の中において試行錯誤の一例とされています。フォッカー社は、後に成功を収める他の機体の開発へと進むことになりますが、この機体の試作は、戦闘機設計の新たな方向性を模索する貴重な経験となったのです。

参考文献

• - Peter M. Bowers & Ernest R. McDowell, "Triplanes: A Pictorial History of the World's Triplanes and Multiplanes", Motorbooks Ltd, 1993.
• - Weyl, A.J., "Fokker: The Creative Years", Putnam, 1965.

もう一度検索