フォッカーの懲罰

フォッカーの懲罰

フォッカーの懲罰とは、第一次世界大戦中の1915年夏にドイツのフォッカー単葉戦闘機が連合国の軽偵察機に対してもたらした影響を指す言葉で、イギリスのメディアによって名付けられました。この時期にドイツは航空戦での優位性を確立し、連合国にとっては空を制する厳しい状況が訪れました。

背景

戦争の初期段階において、航空機同士の戦闘はその場しのぎの武器で行われていました。しかし、やがてイギリスやフランスは専用の戦闘機を開発し、機関銃を装備したモデルが登場しました。イギリスのヴィッカース F.B.5やフランスのモラーヌ・ソルニエ LやNといった機体がそれです。一方で、ドイツは他国に後れを取る形で航空戦に臨んでいましたが、1915年7月には彼らの戦闘機フォッカー E.Iが登場しが、これが状況を一変することとなります。

フォッカー E.Iは「プロペラ同調装置」を備えた最初の機体で、これは機銃をプロペラに当たらないように発射できる技術でした。この技術によって、旧来の連合国の戦闘機よりも優れた運用が可能となり、英語で「アインデッカー」とも呼ばれるこの単葉機はドイツの新たな航空戦力となりました。

結果

1915年の夏の終わりには、ドイツは空の支配権を握り、連合国にとっては情報収集のための偵察が危険なものになりつつありました。特に、連合国の偵察機が防御力を欠いていることが浮き彫りになったことが、戦局に大きな影響を及ぼしました。この時期、初期のドイツの撃墜王マックス・インメルマンやオスヴァルト・ベルケが登場し、名を馳せるようになります。

しかし、連合国の実際の犠牲者数は、後の激しい空中戦と比べて少数に留まりました。この理由としては、フォッカー機が限られた数で配備されていたためであり、実際にこの期間中に撃墜された英軍機はわずか19機。その中でフォッカー機によるものは9機に過ぎませんでした。それにもかかわらず、ドイツによる航空戦での強力な反撃は連合国の士気に大きな影響を与えました。

幸運なことに、連合国も新たな戦闘機を開発・導入していました。イギリスのF.E.2bとエアコー DH.2はともに前方に機関銃を発射可能であったため、1916年初頭には前線に登場し、再び制空権を取り戻す手助けとなりました。この新型機によって、連合国はドイツ機に対抗し、フォッカーの懲罰は終息を迎えました。

その後の展開

しかし、フォッカーの懲罰に続く連合国の制空権は長続きせず、1916年にはドイツ側も戦闘機隊（Jasta）を編成し、アルバトロス D.IIやD.IIIといった新型機を投入しました。1917年の「血の4月」にはイギリス陸軍航空隊が大きな損失を出しますが、その後、連合国は質・量共に優位性を確立し始めました。

またその後、ドイツは新型機の開発を急ぎ、結果としてフォッカー D.VIIが誕生しました。この機体は戦局に多大な影響を与え、休戦協定においては戦勝国が其の機体の引渡しを求めるほどの脅威となったのです。再び「フォッカーの懲罰」の影が落ちることとなるこの状況は、航空戦における各国の技術競争の一片を示しています。

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