フォッシュ (空母)

フォッシュ（Foch, R 99）は、フランス海軍が運用したクレマンソー級航空母艦の2番艦として建造されました。その名称は、第一次世界大戦期に連合軍総司令官を務めたフランスのフェルディナン・フォッシュ陸軍元帥に由来しており、フランス海軍において「フォッシュ」の名を冠した艦船としては、シュフラン級重巡洋艦の3番艦に次いで2代目にあたります。

本艦はフランス海軍で約37年間にわたりその任を果たし、多岐にわたる任務や作戦に参加しました。主な運用歴としては、1978年のジブチへの派遣任務、1983年から1984年にかけてのレバノン内戦への介入作戦などが挙げられます。さらに、1993年から1999年にかけてのユーゴスラビア紛争においては、長期にわたり作戦海域に展開し、航空作戦の拠点として重要な役割を果たしました。

その長期にわたる運用期間中、フォッシュは数度の近代化改装を受けています。特に1987年に実施された改修では、防御力と対空火力の強化が図られました。具体的には、搭載されていた100mm単装砲のうち、左舷後部と右舷前部の計4基が撤去され、その代わりに、より近代的な対空ミサイルシステムが搭載されました。これにより、近距離対空防御能力が向上し、クロタル短SAM8連装発射機2基と、ミストラル近SAM6連装サドラル発射機2基が新たに装備されました。

ユーゴスラビア紛争への実戦参加の合間には、フランス海軍の次期主力艦上戦闘機となるラファールMのシートライアル（洋上試験）も本艦上で実施されました。この試験は、新型機の空母での運用可能性を評価するための重要なプロセスでした。当初は、1999年以降にフォッシュにラファールMの実戦部隊を搭載する計画も存在しましたが、これは実現しないまま、本艦はフランス海軍を退役することになります。

フランス海軍での役目を終えたフォッシュは、新たな活躍の場を求めてブラジル海軍に売却されることとなりました。2000年11月15日にブラジル海軍へ正式に引き渡され、艦名も「サン・パウロ」（São Paulo, A-12）と改められてブラジル海軍の旗の下で再就役しました。サン・パウロとしても一定期間運用された後、最終的にその役割を終えることとなりました。

そして2023年2月3日、ブラジル海軍は既に退役していた元フォッシュ、サン・パウロについて、その艦体を大西洋上で海没処分したことを発表しました。処分は、ブラジル沿岸から約350キロメートル沖合、水深約5,000メートルという深い海域で、環境への影響を考慮しつつ、計画的かつ制御された方法で実施されました。こうして、フランス海軍、そしてブラジル海軍の歴史の一部を担ったこの航空母艦は、大洋の底へと静かに沈んでいったのです。

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