クレマンソー級航空母艦

クレマンソー級航空母艦：フランス海軍の誇りとその遺産

クレマンソー級航空母艦は、フランス海軍が運用していた2隻の航空母艦からなる艦級です。アメリカ国外で初めて攻撃型空母として建造され、フランス初の国産新造空母という歴史的意義も持ちます。1960年代初頭に就役し、2000年までにフランス海軍から退役しましたが、そのうちの1隻はブラジル海軍に売却され、「サン・パウロ」として2017年まで活躍しました。本稿では、その設計、運用、そして文化的影響について詳細に探ります。

黎明期：試行錯誤と技術革新

フランス海軍は、戦艦「ベアルン」の改装空母運用経験から、国産空母の建造を志向していました。1938年には「ジョッフル」の建造に着手しましたが、第二次世界大戦の勃発により未完に終わりました。戦後、自由フランス海軍はイギリスから「ディクスミュード」と「アローマンシュ」を取得し、インドシナ戦争で実戦投入。これらの運用経験が、国産空母の建造計画を加速させることとなります。

当初計画されたPA 28計画は、イギリス海軍の軽空母と同規模でしたが、キャンセルされました。その後、アメリカの援助により「ラファイエット」と「ボア・ベロー」を取得しつつ、PA 54計画としてクレマンソー級の建造が決定。こうして、フランス海軍初の国産新造空母が誕生しました。

設計：技術の粋を集めた艦艇

クレマンソー級は、計画基準排水量22,000トン、全長約258メートルという大型艦でした。同時代の英米空母と比較して全長が長く、広い飛行甲板面積を確保しています。飛行甲板は強度甲板で45mmの装甲を施され、機関部など重要区画にはさらに厚い装甲が備えられていました。また、復原性の問題を解決するため、「クレマンソー」は改修工事を、「フォッシュ」は建造段階からバルジを装着しました。

推進機関はボイラー6缶と蒸気タービンによる2軸推進で、この規模の艦としては珍しい方式でした。軸出力は軸あたり63,000馬力と、アメリカ海軍の超大型空母を除けば最大級を誇ります。しかし、艦内には大量のアスベストが使用されており、のちに解体時の処理問題を引き起こすことになります。

能力：空母としての機能と防御力

クレマンソー級の飛行甲板は全長約257メートルを確保し、アングルド・デッキや蒸気カタパルトを備えていました。カタパルトはイギリス製のミッチェル・ブラウンBS5型で、最大15～20トンの航空機を110ノットまで加速可能でした。

格納庫は全長約180メートル、幅22～24メートル、高さ7メートルと広大で、シュペルエタンダール艦上攻撃機、エタンダールIV偵察機、F-8E(FN)クルセイダー戦闘機、アリゼ対潜哨戒機、AS.365Nヘリコプターなどを搭載していました。搭載機は時代とともに更新され、シュペルエタンダールは核弾頭搭載ミサイル運用能力も有していました。

防御システムは、当初100mm単装砲を8基搭載していましたが、のちにクロタル短SAMに換装されました。「フォッシュ」はブラジル売却時にこれらの兵装が撤去、または更新されました。

運用とその後：フランス海軍とブラジル海軍での軌跡

クレマンソー級は、フランス海軍の航空戦力の中核として長年活躍しました。しかし、老朽化に伴い、2000年に退役。一方「フォッシュ」はブラジル海軍に売却され、「サン・パウロ」として運用されました。ブラジル海軍での運用は2017年まで続き、AF-1 ファルカンや各種ヘリコプターを搭載していました。しかし、老朽化と環境問題により、現在は解体に向けた取り組みが進められています。

文化的影響：映画や小説への登場

クレマンソー級は、その独特な姿や歴史から、映画や小説などにも登場しています。『クリムゾン・タイド』や『頭上の脅威』などの映画で、その雄姿をスクリーンで見ることができます。小説においても、フランス海軍の象徴として、あるいは物語の重要な舞台として描かれています。

結語：時代を駆け抜けた空母の遺産

クレマンソー級航空母艦は、フランス海軍の技術力と歴史を象徴する艦級でした。その運用期間は、冷戦時代から現代までの様々な出来事を反映しており、その存在は今後も人々の記憶に刻まれ続けることでしょう。 解体された現在も、その設計や運用方法などは、今後の航空母艦の設計に影響を与え続けています。

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