フォルクスワーゲン・ブラジリア

フォルクスワーゲン・ブラジリア：ブラジルを席巻した大衆車

フォルクスワーゲン・ブラジリアは、フォルクスワーゲン・ド・ブラジル（フォルクスワーゲンのブラジル法人）が開発・生産した小型乗用車です。ブラジル市場において、同社が独自開発した最初の車種として知られています。

開発の背景と概要

ブラジルでは既に「フスカ」（ビートルのブラジル版）や「パサッチ」（パサートのブラジル版）といったモデルが成功を収めていました。ブラジリアの開発は、それらのモデルの上級車種として、また「フスカ」からの顧客層の移行を目指してスタートしました。「タイプ4」（411/412）をベースに、空冷水平対向4気筒1.6Lエンジンを搭載。リアエンジン、リアドライブのレイアウトを採用し、3ドアと5ドアの2種類のボディタイプが用意されました。1973年6月、ブラジル市場にデビューしました。

ベストセラーへの道

ブラジリアは、リアエンジンの特性による操縦時の不安定さや、フロントトランクの小ささ、車内の高温化といった問題点を指摘されました。しかし、価格を抑えて販売されたこと、そして「フスカ」からの乗り換え需要をうまく捉えたことが功を奏し、一般ユーザーだけでなくタクシーとしても広く普及。ブラジル法人におけるベストセラーモデルとなりました。

1970年代後半にはマイナーチェンジを実施。フロントグリルやバンパーのデザイン変更、装備の充実を図り、ブラジル市場における人気を維持しました。生産は1982年末まで続けられ、販売は1983年まで続けられました。後継車種は、ブラジル法人独自開発の小型車「ゴル」となります。

輸出とノックダウン生産

ブラジリアはブラジルにおける低人件費を背景とした低価格と、フォルクスワーゲン車種との部品共用による高い整備性が評価され、南米諸国（チリ、ボリビア、ウルグアイ、パラグアイなど）への輸出だけでなく、ポルトガルやフィリピンにも輸出されました。ナイジェリアではノックダウン生産も行われ、グローバルな展開を見せています。

エタノール仕様と派生車種

ブラジル政府が進めたエタノール燃料政策を受け、1970年代後半にはエタノール仕様のブラジリアも導入されました。また、同時期に生産されていた「1600/ヴァリアンチ」の後継車種「ヴァリアンチ2」のベース車としても利用されるなど、フォルクスワーゲン・ド・ブラジルの様々な車種開発に貢献しました。

まとめ

フォルクスワーゲン・ブラジリアは、ブラジル市場で成功を収めたフォルクスワーゲンの代表的なモデルです。独自の設計、低価格、そして高い整備性によって、ブラジルのみならず世界各国で愛されました。リアエンジンの特性に起因する課題もありましたが、ブラジルの自動車史において重要な役割を果たしたことは間違いありません。その歴史と功績は、現在でも多くのフォルクスワーゲンファンに語り継がれています。

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