フォルティ・FG01

フォルティ・FG01：F1界に残した足跡

1995年、F1世界選手権に参戦したフォルティチームは、彼らのマシン「フォルティ・FG01」と共に、F1の歴史にその名を刻みました。このマシンは、若手エンジニアやエアロダイナミクス専門家たちの共同作業によって生み出され、その後、名匠セルジオ・リンランドの改良が加えられました。

開発と初期の苦戦

当初、FG01は深刻な問題を抱えていました。設計段階からの重量過多や、空力特性の悪さは、マシンの性能を大きく阻害しました。特に、リヤウイングへの空気の流れが不足しており、ダウンフォースの不足は大きな弱点でした。加えて、当時としては珍しいマニュアルトランスミッションの採用も、競争力の低下に繋がっていました。開幕戦では、他のマシンと比較して8～9秒ものタイム差をつけられるほどの遅さだったと言われています。

リンランドは、この問題解決のため、ピニンファリーナが所有する風洞施設を利用した空力改良に着手。エアボックスやエンジンカバーの変更などを通して、マシンの空力性能を向上させました。サンマリノグランプリでは、ドライバーから操縦性の向上が報告されましたが、根本的な問題点は依然として残ったままです。リンランドは最終的にチームを離脱することになりますが、彼の改良によってFG01は少しづつ戦闘力を高めていきました。

継続的な改良と成長

リンランドの後を継いだジョルジオ・スティラーノは、フィアット社の風洞施設を活用して、さらなる改良を進めました。サイドポンツーンの高さを変更するなど、空力特性の改善に注力。フロントノーズも改良され、フロントウイングも変更されました。これらの改良によって、マシンのパフォーマンスは着実に向上していきました。

しかし、上位チームとの差は依然として大きく、イギリスグランプリ時点でも、8～9秒ものタイム差を埋めることはできませんでした。それでも、この年のエントリー台数の減少という幸運にも恵まれ、全レースに出走を果たしました。チームの目標は完走であり、ドライバーたちは懸命にマシンを走らせました。

特に、モレノ選手のドライビングは、モータージャーナリストから高い評価を受けました。マニュアルトランスミッションという、当時としては時代遅れとも言えるシステムを巧みに操り、限界ギリギリまでマシンを攻める姿は、多くの人の心を掴みました。また、新人ドライバーであるディニス選手のために、彼が慣れ親しんだシフトパターンを採用するなど、チーム一丸となってレースに臨んだ姿勢も印象的でした。

シーズン終盤には、セミオートマチックトランスミッションの開発も進められ、ポルトガルグランプリではスペアマシンへの搭載に成功。最終戦オーストラリアグランプリでは、ディニス選手が7位入賞を果たすなど、FG01は着実に進化を遂げました。完走率ではフットワーク(アロウズ)を上回るなど、序盤の苦戦から大きく成長したと言えるでしょう。

1996年シーズンとFG01B

1996年シーズンも、新型マシンの完成を待つ間、改良型のFG01Bが使用されました。このマシンは、安全性規定の変更に対応した改良が加えられましたが、基本的な設計は前年モデルと同様でした。しかし、エンジンがフォード・EDからフォード・ゼテックRへと変更されたことにより、大幅なパワーアップが図られました。

しかし、このパワーアップは、脆弱な車体では制御しきれないものでした。パワーアップしたエンジンは、車体の性能を圧倒し、結果的にマシンのバランスを崩してしまいました。このため、FG01Bは前年モデルよりも戦闘力が低いと評され、予選落ちを繰り返すこととなります。最終的に、新車のFG03が投入されると、FG01Bは役目を終えました。

まとめ

フォルティ・FG01は、決して速いマシンではありませんでした。しかし、その開発過程やドライバーたちの努力、そしてチームの粘り強さによって、F1という舞台で存在感を示すことができました。多くの課題を抱えながらも、着実に成長を遂げたFG01は、F1の歴史における、一つの物語として語り継がれるべきマシンと言えるでしょう。

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