フォルティ・コルセ:F1を駆け抜けた小さな挑戦者
フォルティ・コルセは、
1995年から1996年にかけてF1世界選手権に参戦した
イタリアのレーシングチームです。チームオーナーはグイド・フォルティ氏。
イタリアF3選手権で輝かしい優勝歴を持ち、国際F3000選手権にも参戦していました。1987年には、日本人ドライバーの
野田英樹選手もフォルティ・コルセに所属していました。
F1への華々しいデビューと厳しい現実
1995年、フォルティ・コルセは国際F3000で活躍した
ペドロ・ディニス選手と共にF1への挑戦をスタートさせました。もう一人のドライバーは、3年ぶりのF1復帰となった
ロベルト・モレノ選手。しかし、チームは実質的にディニス選手のスポンサーが支えるワンマンチームの様相を呈していました。
彼らのマシン、FG01はフォード・
コスワース製のエンジンを搭載していましたが、デビュー当初は他チームより60kgも重いという大きな欠点がありました。開幕直前にチームに加わった
セルジオ・リンランド氏の尽力により、スポンサーからの資金を活かした
風洞実験による改良が行われました。しかし、リンランド氏はわずか3ヶ月でチームを離れてしまいます。
その後はジョルジョ・スティラーノ氏が開発を引き継ぎ、FG01は軽量化や空力改良、フロントノーズの変更などを経て、Bスペックへと進化しました。しかし、マシンの基本性能の低さは否めず、予選では最高20位、決勝では最高7位という結果に終わりました。ディニス選手はシーズン後半に完走を重ね、チームの戦闘力は徐々に向上していきました。最終的には完走率で最下位を脱出するまでに至りました。
しかし、開発はディニス選手のマシンに優先的に行われ、モレノ選手はシーズンを通して苦戦を強いられました。極端な例として、
イタリアGPでは再スタート時にモレノ選手のマシンがディニス選手に提供されたため、モレノ選手はレースに出走すらできませんでした。
資金難と撤退
1996年シーズン、チームマネージャーとして
チェーザレ・フィオリオ氏が加わりましたが、ディニス選手がスポンサーと共に
リジェに移籍したことで、フォルティ・コルセは深刻な資金難に陥ります。この年から導入された予選の107%ルールにも苦しめられ、予選落ちを繰り返す日々が続きました。
この年のドライバーは、
ルカ・バドエル選手と
アンドレア・モンテルミーニ選手。テストドライバーには
フランク・ラゴルス選手が起用されました。エンジンはフォード・
コスワース・ZETEC-R、シャシーは前年の改良型FG01B(またはFG02)、サンマリノGPからは
ジョージ・ライトン設計のFG03が投入されましたが、マシンの性能不足は解消されませんでした。
スペインGP以降、シャノン・レーシング傘下に入り、マシンのカラーリングも黄色から緑に変更されました。しかし、スポンサーフィーは支払われず、フォード・
コスワースへのエンジン代金の支払いが滞った結果、第10戦イギリスGPを最後にエンジン供給を打ち切られ、シーズン途中でチームは撤退を余儀なくされました。
ディニス家の影とマシンの欠点
フォルティ・コルセのF1挑戦は、ブラジルの実業家アビーリオ・ディニス氏の息子である
ペドロ・ディニス選手のF1デビューを支援するために始まりました。ディニス家の莫大な資金がチームを支えていましたが、その資金源はディニス家そのものであったため、ディニス選手の去就がチームの存続を左右する不安定な状況でした。
1995年、ディニス選手とモレノ選手の
ブラジル人コンビが組まれました。しかし、経験も速さも劣るディニス選手がチーム内で優先される体制に、一部メディアからは「裕福な
ブラジル人が貧乏な
ブラジル人を雇っている」といった皮肉な報道もありました。
さらに、FG01は他チームが
セミオートマチックトランスミッションを採用する中、6速
マニュアルトランスミッション、
パワーステアリングなしという古風な設計で、規定重量を大幅に超過していました。モンツァでのテストでは、下位カテゴリのF3000マシンよりも最高速度が遅く、エンジン回転数も低く、サスペンション性能も劣っていました。
そして、フォルティ・コルセの遺産
フォルティ・コルセが使用していたエンジンは、翌1997年にF1に参戦したマスターカード・ローラF1チームに提供されましたが、資金不足だった両チームにとって、信頼性の低いエンジンであったことは間違いありません。
2013年1月には、チーム創設者であるグイド・フォルティ氏が72歳で他界しました。フォルティ・コルセは短命に終わったチームですが、F1という世界に果敢に挑戦したその歴史は、多くのファンに記憶されています。彼らの挑戦は、F1という舞台の厳しさと、成功の裏に潜む様々な要素を改めて私たちに示唆するものです。