フォーディズム

フォーディズムとは

フォーディズム（Fordism）は、アメリカの自動車メーカー、フォード・モーター社の創業者であるヘンリー・フォードが、自社の工場で導入した生産方式と経営思想を指します。フォード主義とも呼ばれ、現代の資本主義を理解する上で不可欠な概念です。この概念は、経済学のレギュラシオン理論、社会学、経済地理学などで広く用いられています。もともとは、イタリアの思想家アントニオ・グラムシが名付けたとされています。

フォーディズムの二つの意味

フォーディズムには、主に二つの意味合いがあります。

第一の意味：生産システムとしてのフォーディズム

第一に、フォーディズムは、フォード・モーター社が科学的管理法を応用して開発した生産システムを指します。1908年に発売されたフォード・モデルTの成功を背景に、1950年代から世界中に普及しました。その中核となるのは、ベルトコンベアを用いた流れ作業です。コンベアの速度が生産効率を決定づけるこのシステムは、製品の単純化と部品の標準化を特徴としました。さらに、生産量に比例して賃金が上昇する「生産性インデックス賃金」制度が導入され、労働者のモチベーションと購買力の向上に貢献しました。こうして、フォーディズムは高度経済成長を支える重要なモデルとなり、後のトヨタ自動車の生産方式（トヨティズム）にも影響を与えました。

第二の意味：経済体制としてのフォーディズム

レギュラシオン理論においては、フォーディズムは第二次世界大戦後から1970年代までの高度経済成長期における経済体制を指します。この体制は、生産性の向上による大量生産（内包的な蓄積体制）と、消費拡大による好循環を両輪としていました。具体的には、労働組合の承認、最低賃金制度の確立、ケインズ経済政策、社会保障政策などを通じて需要拡大が図られました。これらの政策は、大量生産された製品を消費するための市場を創出し、経済成長を促進しました。

フォーディズムの意義と影響

フォーディズムは、20世紀の経済発展に大きく貢献しました。大量生産によるコスト削減と、賃金上昇による消費拡大は、経済成長の原動力となりました。しかし、1970年代のオイルショック以降、フォーディズムの限界が指摘されるようになり、より柔軟な生産方式であるポスト・フォーディズムが台頭することになりました。

関連用語

フォード・モデルT: フォーディズムの象徴となった、フォード社の自動車。
フォード・システム: フォーディズムに基づく生産システム。
トヨティズム: トヨタ自動車の生産方式。フォーディズムの影響を受けつつ、独自の発展を遂げた。
すばらしい新世界: オルダス・ハクスリーのSF小説。フォーディズムによって管理された社会を描く。
ポスト・フォーディズム: フォーディズムに代わる、より柔軟な生産体制。

参考文献

新川敏光他　『比較政治経済学』　有斐閣〈有斐閣アルマ〉、2004年。

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