フォード トライモータ (Ford 4-AT Trimotor)
フォード トライモータは、1920年代の後半から1930年代初頭にかけて製造されたアメリカの
旅客機です。この機体はその名の通り、3発のエンジンを搭載しており、機首と両翼に各1基ずつ配置されています。この特徴的な
設計は、当時の航空技術の進歩とフォード社の理念を反映しています。
概要
1926年から
1933年にかけて、フォードは199機のトライモータを生産しました。外観やレイアウトは、先に登場したフォッカーの3発
旅客機であるフォッカー VIIb-3Mに非常に類似しており、アルクラッド材(耐食性の高い金属)を外板に使用することで、その耐久性を高めています。このため、トライモータは「ブリキのガチョウ」とも呼ばれましたが、重量が増えた結果として、フォッカーに比べて
航続距離は少し短くなっています。
フォードの創業者ヘンリー・フォードは、
航空機の
設計において「全金属製、複数エンジンの単葉機」という基準を掲げており、このトライモータはその思想を具体化したものです。また、フォードは生産の効率性を高めるために、1日に1機を製造することを目指していました。
この量産体制を実現するため、
1925年にフォードはウィリアム・B・スタウトが設立したStout Aircraft Companyを買収しました。初期の3-ATモデルはスタウトが
設計しましたが、4-ATモデルからは
設計がウィリアム・B・メイヨに引き継がれました。しかし、
販売状況は芳しくなく、さらに
世界恐慌が到来したことも影響し、フォードは
航空機業界からの撤退を余儀なくされました。
軍事用途
フォード トライモータは民間での使用だけでなく、
アメリカ陸軍航空隊でも軍事利用されました。陸軍航空隊では、4-AT-B型とE型が
輸送機としてC-3という名称で採用され、その後エンジンの換装を行いC-9型として再運用されています。また、海軍でも「JR」という名称で使用されました。
さらに、派生型モデルとして5-AT-BおよびD型もC-4として採用され、爆撃機型のXB-906も試験されました。トライモータは、そのユニークなデザインと効率的な生産方式により、当時の
航空機設計における重要なマイルストーンとなっています。
結論
フォード トライモータは、アメリカの航空史において非常に重要な位置を占める
旅客機であり、その影響は後の
航空機設計や製造に多大な影響を与えました。全金属製の構造と三発のエンジン配置は、
航空機のデザインや技術革新の方向性を示すものとなり、トライモータは今なお航空愛好家や歴史家にとって魅力的な存在です。