フォード・グラナダ (ヨーロッパ)

フォード・グラナダ：ヨーロッパを代表する中型車の歴史

フォード・グラナダは、1972年から1994年まで、イギリスと西ドイツのフォード欧州部門によって製造・販売された中型乗用車です。その歴史は、フォードのヨーロッパにおける生産体制の統合と、市場における競争力の強化という二つの大きな流れと深く関わっています。

初代グラナダ (1972年-1977年)：統合への道

それまで、フォードの欧州における上級車は、イギリスではゼファー・ゾディアック、西ドイツではタウヌス17M/20M/26Mと、国ごとに異なるモデルが生産されていました。グラナダは、1967年のエスコート、1969年のカプリ、1970年のタウヌス13-15M/コーティナと続く、英独生産モデルの統合戦略の最終段階を飾るモデルとして登場しました。

当初は廉価版に「コンサル」という名称が用いられましたが、1975年には全車が「グラナダ」に統一されました。機構面では、既存モデルの技術が継承されており、エンジンはイギリス生産車には「エセックス」V型4気筒2,000cc、V型6気筒2,500/3,000ccが、ドイツ生産車には「ケルン」V型4気筒1,700cc、V型6気筒2,000/2,300/2,600cc、そしてイギリスと同じV型6気筒3,000ccが搭載されました。サスペンションは、ダブル・ウィッシュボーン独立懸架式（前）と固定軸式（後）を採用。ボディバリエーションは、2ドア・4ドアセダン、5ドアワゴン、そして西ドイツ限定で発売された2ドアクーペが存在しました。クーペは1974年のマイナーチェンジでデザインが変更され、イギリスでも販売されるようになりました。南アフリカでも生産され、現地向けにはV8エンジン搭載車も存在しました。日本にも輸入され、一部ディーラーで販売されていました。

2代目グラナダ (1977年-1985年)：進化とグローバル化

1977年に登場した2代目は、角張ったスタイリングと改良されたメカニズムを特徴としていました。大きな変更点として、イギリス向けにも「ケルン」V6エンジン（2,300/2,800cc）が搭載されるようになり、「エセックス」エンジンから置き換えられました。2,800ccモデルには燃料噴射システムが採用され、スポーティなモデルも設定されました。プジョー504/505と同じディーゼルエンジンを搭載したモデルも少数生産されました。マークIIからは、イギリス向けも含めすべてのグラナダがドイツで生産されるようになりました。また、2ドアクーペは生産終了となりました。1982年のマイナーチェンジでは、フロントグリルが変更され、NVH性能の向上も図られました。最上級グレードには、コノリー製本革シートが装備されました。日本へは1980年代半ばに、2.8iモデルの輸入が再開されました。韓国の現代自動車でもOEM生産され、東南アジアへ輸出されました。

3代目グラナダ (1985年-1994年)：スコーピオへの変貌

1985年のモデルチェンジで、ワゴンが廃止され、5ドアハッチバックが追加されました。名称は、イギリスとアイルランドを除き「スコーピオ」に変更されました。イギリスでは1994年までグラナダの名称で生産が続けられましたが、ヨーロッパ市場におけるフォードのブランド戦略の変化を象徴する出来事となりました。

まとめ：グラナダの遺産

フォード・グラナダは、フォードのヨーロッパにおける生産統合と、グローバル化への取り組みを象徴するモデルでした。時代に合わせて進化を続け、市場のニーズに対応しながら、その存在感を示しました。 日本市場への輸入も繰り返され、その歴史は、単なる自動車の歴史にとどまらず、国際的な自動車産業の変遷を語る上で重要な一端を担っています。グラナダは、多くのユーザーに愛され、時代を超えて語り継がれる一台と言えるでしょう。

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