フォード・コスワース・EDエンジン

フォード・コスワースEDエンジン：F1を彩った低価格高信頼性エンジン

フォード・コスワースEDエンジンは、コスワース社がフォード社の支援を受けて開発した、フォーミュラ1（F1）用エンジンです。1995年のレギュレーション変更でエンジン排気量が3500ccから3000ccに縮小されたことを受け、それまでのHBエンジンをベースに開発されました。しかし、EDエンジン開発における最大の焦点となったのはコスト削減でした。

当時、F1チーム、特にカスタマーチームにとって、エンジン開発費用の負担は非常に大きくなっており、高額なエンジン使用料がチームの撤退を招く一因となっていました。コスワース社は、EDエンジン開発において、チームへの経済的負担を軽減することを最優先事項とし、徹底的なコスト削減を目指しました。

その結果、EDエンジンはHBエンジンを凌駕する性能は持ち得ませんでした。最高出力は600馬力に届かず、同時期に存在した他のF1エンジンと比較しても、出力不足が目立つエンジンであったと言えます。性能面では、F3000で使用されていたDFVエンジンの中古部品が流用されているという噂が立つほど、低性能ぶりは際立っていました。

しかし、EDエンジンは高い信頼性を誇っていました。そのため、エンジン故障によるリタイヤは少なく、レース完走率は高かったと言えます。低出力であることによる順位への影響が大きかったものの、その信頼性は、コストパフォーマンスという点において、一定の評価に値するものだったと言えるでしょう。

EDエンジンは1995年シーズンからF1で使用され始め、ミナルディ、シムテック、パシフィック、フォルティの4チームに供給されました。しかし、その圧倒的なパワー不足は各チームを失望させました。特にミナルディは、コスワース社に対して強い不満を抱き、独自にECUを開発するなど、エンジン性能の改善に奔走しました。結果、他の供給チームは1995年限りでEDエンジンの使用を打ち切りました。

1997年には、ヤマハエンジンを失ったティレルチームがEDエンジンを使用しましたが、そのシーズン限りでEDエンジンの供給は終了しました。EDエンジンのF1での最高位は、1997年モナコグランプリでティレルのミカ・サロが記録した5位でした。

EDエンジンの開発は、F1におけるコスト削減と性能の両立という難しい課題に挑戦した試みと言えます。その結果は、コスト面では成功と言えるものの、性能面では大きな課題を残した形となりました。しかし、その信頼性と、チームへの経済的負担軽減という点では、EDエンジンはF1の歴史に独自の足跡を残したと言えるでしょう。

スペック

全長：595mm
全幅：591mm
全高：521mm
重量：129.5kg
気筒数・角度：V型8気筒・75度
バルブ数：DOHC4バルブ
方式：自然吸気

供給チーム

ミナルディ (1995年〜1996年)
シムテック (1995年)
パシフィック (1995年)
フォルティ (1995年)
ティレル (1997年)

記録

F1での優勝回数：0回

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