フキンシンちゃん

『フキンシンちゃん』作品詳細

『フキンシンちゃん』は、長嶋有が手がけた日本の漫画作品です。漫画制作ソフト「コミPo!」を駆使して描かれ、ウェブコミック配信サイト「ぽこぽこ」で連載開始、その後「WEBコミック EDEN」へと移籍しました。2012年4月には単行本も発売され、後に『美術手帖』や『小説の家』にも番外編が掲載されるなど、話題を呼びました。

著者はブルボン小林名義で漫画評論や漫画賞審査員も務めており、本作は商業漫画デビュー作として注目を集めました。芥川賞作家による漫画作品であること、そして「コミPo!」を使用した商業作品という点でも、漫画界に新たな風を吹き込みました。

あらすじ

物語の中心は、不謹慎な発言を繰り返す女子高生、蕗山フキ子（通称：フキンシンちゃん）と、その友人の君尾ミル子です。ミル子はフキ子の発言に日々驚き、その内容をネットで検索するのが日課となっています。二人の高校生活は、クラスメイトたちとの日常を中心に展開しますが、物語中盤で、金持ちの男子生徒・豪浴寺がミル子を我が物にしようと、ミル子の漫画家である父親の連載を打ち切らせるという事件が発生します。

経済的に困窮したミル子は転校を余儀なくされ、同時にフキ子の姿も消えてしまいます。しかし、フキ子の正体は実は特務機関のスパイであり、彼女の暗躍によって豪浴寺の企業は買収され、ミル子は転校を免れることになります。任務を終えたフキ子は、ミル子たちの思い出を写真に残し、静かに姿を消します。

登場人物

蕗山フキ子
本作の主人公。紫色の髪が特徴的な女子高生。不謹慎な発言が多く、実は巨悪と戦うスパイという裏の顔を持つが、その詳細は作中では明確には語られない。番外編では再びミル子の前に姿を現す。
作者のTwitterで「フキンシンちゃんメモ」として投稿されていた一言ネタがキャラクターの原点。作中で「フキンシンちゃん」と呼ばれるのは終盤の作者との対話のみである。
長嶋有の小説『問いのない答え』にも登場。
君尾ミル子
本作の視点人物。オレンジ色の髪が特徴。フキ子の不謹慎な発言をネットで検索することが日課。
漫画家の父親と二人暮らしで、母親とは死別している。
脇坂さん
ミル子の友人。緑色の髪が特徴。アダ名は「ワッキー」。明るく元気で芸能好き。
薬師丸さん
ミル子の友人。黒色の髪が特徴。アダ名は「ヤクちゃん」。無邪気だが天然で危なっかしい一面も持つ。ラブホテル経営者の娘。
竹畑
生徒会副会長の男子。説明的な話し方をする。
豪浴寺
名門豪浴寺一族の御曹司で、校内一の金持ち。
ミル子を困窮させた後に援助して恩を売ろうとする。
ルース先生
英語教師の女性。謎が多いが、最終話でフキ子と同じ組織の仲間であることが明かされる。

特徴

本作は、学園ギャグ漫画でありながら、様々な漫画作品や漫画形式自体に対するオマージュやパロディが多数含まれています。また、長嶋有の他の小説作品と同様に、実在の固有名詞が多数登場するのも特徴です。

作中に登場する実在の固有名詞の例

丹下左膳
白痴
カジモド
忌野清志郎
実話ナックルズ
市橋達也
スーパーフリー

書誌情報

長嶋有『フキンシンちゃん』マッグガーデン、2012年4月14日発売、ISBN 978-4-86127-987-4

関連情報

長嶋有漫画化計画: 同時期に企画・連載された、著者の小説の漫画化。

外部リンク

フキンシンちゃん - WEBコミック EDEN
* フキンシンちゃん - コミック | ぽこぽこ

本作は、ギャグ要素とシリアスな展開が入り混じった独特な世界観で、多くの読者を魅了しました。長嶋有の才能が遺憾なく発揮された、異色の学園漫画として、これからも注目されるでしょう。

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