フシグロセンノウ

フシグロセンノウ（節黒仙翁）

フシグロセンノウ（学名：Lychnis miqueliana）は、ナデシコ科センノウ属に分類される多年草です。その名の通り、茎の節が黒褐色になるのが特徴で、日本固有の植物として知られています。

特徴

フシグロセンノウは、直立する茎を持ち、高さは40cmから90cm程度に成長します。茎の上部は枝分かれし、全体にまばらな軟毛が見られます。葉は無柄で、茎に対生して生えます。葉身は卵形から長楕円状披針形をしており、先端は鋭く尖り、基部は細くなっています。大きさは長さ5cmから14cm、幅2.5cmから5cm程度です。

花期は7月から10月にかけてで、枝分かれした茎の先に、鮮やかな朱赤色の花を数個つけます。萼は長さ2.5cmから3cmの長円筒状で、先端が5つに裂けており、毛はありません。花弁は5枚で、長さは2.5cmから3cm程度です。果実は蒴果で、先端が5つに裂けた長楕円形をしています。

種小名の「miqueliana」は、ドイツの植物学者であるA.W.ミクエルにちなんで名付けられました。また、別名として「ゼニバナ」や「オウサカバナ」とも呼ばれています。

分布と生育環境

フシグロセンノウは、日本固有の植物で、本州、四国、九州の山地の林下などに自生しています。特に、山間部の湿り気のある場所に多く見られます。植物学者の田中澄江は、著書『花の百名山』で、雲取山を代表する高山植物の一つとして紹介しています。現在では、山野草として苗が販売され、庭などでも栽培されることがあります。

種の保全状況評価

フシグロセンノウは、各都道府県によりレッドリストに指定されており、地域によっては絶滅が危惧されています。環境省としてのレッドリスト指定はありませんが、森林伐採や園芸採取により、個体数が減少傾向にあります。具体的な指定状況は以下の通りです。

絶滅：秋田県、佐賀県、長崎県、鹿児島県
危急種：千葉県、石川県、山口県、愛媛県、高知県
準絶滅危惧：埼玉県、東京都、富山県、大分県

近縁種

フシグロセンノウの近縁種として、以下の植物が挙げられます。

エゾセンノウ (Lychnis fulgens)：北海道と長野県軽井沢町に分布する多年草。
エンビセンノウ (Lychnis wilfordii)：北海道・埼玉県・長野県の山地林縁に分布し、花弁が濃橙色の多年草。環境省によりレッドリストの絶滅寸前種に指定。
オグラセンノウ (Lychnis kiusiana)：本州西部と九州の湿地に分布し、花が桃色を帯びる多年草。環境省によりレッドリストの絶滅寸前種に指定。
マツモトセンノウ (Lychnis sieboldii)：阿蘇山に分布する多年草。花が美しいことから、江戸時代から庭園に植えられてきた。環境省によりレッドリストの危急種に指定。

関連画像

フシグロセンノウの花

フシグロセンノウの葉

フシグロセンノウの群生

脚注

参考文献
佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編 編『日本の野生植物 草本 Ⅱ 離弁花類』平凡社、1999年2月。ISBN 458253502X。

関連項目
センノウ属
誕生花（9月14日）

外部リンク
静岡県による標本データへのリンク'>フシグロセンノウの標本データ

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