フジタイゲキ

フジタイゲキ（富士大戟）

フジタイゲキ（学名: Euphorbia watanabei）は、トウダイグサ科トウダイグサ属に分類される大型の多年草です。その自生地は、静岡県内の低山地、特に茶草場として知られる地域に限られています。これらの地域では、定期的な草刈りが行われており、それがフジタイゲキの生育を支えていると考えられています。

特徴

フジタイゲキは、植物学者である牧野富太郎によって1920年に新種として発表されました。この発見は、富士山麓で採取された標本に基づいています。草丈は0.7メートルから1.5メートルに達し、夏に開花します。主に山地や低山地の草原で見られます。

フジタイゲキは、同じトウダイグサ属のタカトウダイ（E. lasiocaula）といくつかの点で異なります。例えば、フジタイゲキの苞葉や輪生葉は黄色を帯びており、果実と種子がより大きいのが特徴です。また、茎には毛がほとんど生えていません。イワタイゲキ（E. jolkinii）との違いとしては、葉が細く、腺体の表面のくぼみが不明瞭であること、そして山地に生育することが挙げられます。さらに、フジタイゲキは夏に花を咲かせ、果実の突起がまばらであるという特徴も持っています。

ヒュウガタイゲキ（E. watanabei subsp. minamitanii）は、宮崎県の丘陵地に自生する亜種であり、花部と果実の形態がフジタイゲキとよく似ています。しかし、輪生葉がより長く、種子の表面にしわ状の模様がある点で区別され、フジタイゲキの亜種と考えられています。

保全状況

環境省のレッドリストでは、フジタイゲキは絶滅危惧II類 (VU) に指定されています。これは、絶滅の危険が増大している種であることを意味します。

静岡県版レッドデータブックにおいては、さらに深刻な絶滅危惧IB類 (EN) に指定されています。この指定は、より高い絶滅の危険性を示唆しています。掛川市では、生息地である粟ヶ岳中腹の東山地区において、地権者との間で「指定希少野生動植物種東山保護地区協定」を締結し、保護活動に力を入れています。

化学成分

フジタイゲキには、以下の化学成分が含まれています。

ノナコサン（直鎖アルカン; C29H60 ）
テトラコサノール（脂肪族アルコール; C24H49OH）
蝋状物質（融点59~60 ℃）
β-シトステロール（植物ステロール）
5環性トリテルペン類
タラキセロールアセテート(C32H52O2)
ルペオール アセテート（C32H52O2）
タラキセロン（C30H48O）
タラキサステロール（C30H50O）
アルヌセノン
ルペロン
オイホルビンI

注意点

フジタイゲキの根茎は、中国の生薬である大戟（ターチ）の一種として用いられます。大戟には利尿や峻下作用がありますが、オイホルビンの中には発がんプロモーターとして作用するものがあり、猛毒とされています。そのため、一般的に内服薬としての使用は禁止されています。漢方薬としては、腎臓病のむくみ緩和などの目的で外用されることがありますが、大戟の取り扱いには専門家の指導が必要です。

アメリカ食品医薬局 (FDA) に認可された日光角化症の治療薬であるインゲノール 3-アンゲラート（商品名：Picato (R) gel）については、チャボタイゲキ（Euphorbia peplus）の項目を参照してください。

参考文献

Kurosawa, T.; Serizawa, S.; Ohashi, H. (1996). “A Taxonomical Note on Euphorbia watanabei Makino (Euphorbiaceae)”. Acta Phytotax. Geobot. 47 (1): 11-17.

関連項目

茶草場農法
レッドデータブック
タカトウダイ

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