フッ化スルフリル

フッ化スルフリル（Sulfuryl Fluoride）

フッ化スルフリルは、化学式SO2F2で表される無機化合物であり、その構造は特異な対称性を持つ四面体形をしています。この化合物は、イオウと酸素の間の距離が140.5pm、イオウとフッ素の間が150.3pmと比較的短く、結合角度はO-S-Oが124°、F-S-Fが96°です。フッ化スルフリルは、二酸化[[硫黄]]とフッ素の直接反応によって生成されます。実験室での合成方法として、塩化フッ化スルフリルを経た多段階の化学反応が利用されることが一般的です。

構造と合成法

実験室でのフッ化スルフリルの合成は、以下のような化学反応を経て行なわれます。

1. 二酸化[[硫黄]]（SO2）とフッ化カリウム（KF）を反応させ、塩化フッ化スルフリル（KSO2F）を生成。
2. 続いて、この塩を塩素（Cl2）と反応させることで、臭化スルフリル（SO2ClF）を生成し、カリウム塩を除去します。
3. 最終段階では、再度フッ化スルフリルの生成が進むことで、フッ化スルフリル（SO2F2）を得ます。また、フルオロスルホン酸の金属塩の加熱処理からも得られることがあります。

用途

フッ化スルフリルは、ダウ・ケミカル社によって開発され、オゾン層に有害とされる臭化メチルの代替として利用される燻蒸剤です。主にシロアリやキクイムシ、トコジラミなどの駆除に用いられます。住宅の燻蒸では、建物全体を密封し、数時間から数日間にわたりテント内をフッ化スルフリルで満たした後、換気を行います。この間は人が近づけないように注意が払われます。無色無臭であるため、作業の安全確保のためにはクロルピクリンなどの刺激性物質が使用され、作業者を安全に退去させる工夫がされています。

安全性

日本の毒物及び劇物取締法ではフッ化スルフリルは毒物として分類されています。特に、ラットを用いた実験では経口投与時の半数致死量が100mg/kg、吸入時の致死濃度は雄で1865ppm、雌では1510ppmとされています。体内に摂取されると、代謝性アシドーシスや低カルシウム血症、不整脈、肺浮腫といった深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。適切な救急処置としては、カルシウムの補給や血液透析などが必要です。また、過去には埼玉県の博物館で使用されたフッ化スルフリルが原因で作業員の死亡事故が発生しています。この化合物自体は腐食性や刺激性がないものの、圧縮液化された形状では凍傷の危険があります。非可燃性ですが、加熱により分解し、有害なフッ化水素や硫黄酸化物が生成されるため、注意が必要です。

環境への影響

最近の研究によると、フッ化スルフリルは大気中に約36年残留し、温室効果は二酸化炭素の4800倍に達することが報告されています。これにより、環境にも重要な影響を及ぼすことが懸念されています。

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