フライ・フィッシング

フライフィッシングとは

フライフィッシングは、西洋式の毛針であるフライを用いて行う釣りです。その起源はイギリスの貴族の娯楽とされ、現在でも格式高いスポーツとして親しまれています。日本では、1902年に英国商人によってカワマスが放流されたことが始まりとされ、その場所は「日本のフライフィッシングの聖地」と呼ばれています。

フライフィッシングの特徴

フライフィッシングは、以下の4つの要素から構成されます。

1. キャスティング: フライは非常に軽量なため、釣り糸（フライライン）の重さを利用して投入します。そのため、キャスティング技術はフライフィッシングの基本となります。オーバーヘッドキャスト、ロールキャスト、スペイキャストなど、様々な投法があります。
2. ファイト: 魚との直接的なやり取りを楽しむ技術です。他の釣りと異なり、オモリや疑似餌の重さに邪魔されず、ダイレクトに魚の引きを味わえます。
3. タイイング: 魚が捕食する水生昆虫や小魚に似せたフライを製作することです。フライフィッシングの重要な要素の一つです。
4. 自然観察: 釣果を上げるためには、その時期、場所に生息する水生昆虫や小魚の種類を把握し、魚が捕食している餌に似たフライを選ぶ必要があります。自然観察は、フライフィッシングの哲学とも言えるでしょう。

これらの要素は、いずれも一朝一夕で習得できるものではなく、フライフィッシングの奥深さを形成しています。

フライの種類

フライフィッシングは、使用するフライの種類によって、大きく2つに分類できます。

ドライフライフィッシング: フライを水面に浮かせて釣る方法です。
ウェットフライフィッシング: フライを水中に沈めて釣る方法です。

また、フライを水中に沈める釣り方でも、ニンフと呼ばれる水生昆虫の幼虫を模したフライを使う場合は、ウェットフライフィッシングとは区別して「ニンフフィッシング」と呼ばれることがあります。

対象魚

フライフィッシングでは、主にサケ科の魚をターゲットとすることが多いですが、最近では管理釣り場や海で楽しむ人も増えています。また、鯉やブラックバスをフライフィッシングで狙う人もいます。

タックル

フライフィッシングに必要なタックルは以下の通りです。

必須タックル

ロッド: 竿
リール: 糸を巻き取る道具
フライライン: 専用の釣り糸
リーダー: フライラインの先に付ける糸
フライ: 毛針

その他のタックル

ティペット: リーダーの先に付ける糸
フロータント: フライやラインを浮かせるための塗布剤
フィッシングベスト: フライボックスなどを入れる上着
ウェーダー: 胴付長靴

ロッド、リール、フライラインのサイズ

ロッド、リール、フライラインのサイズは、「番手」という単位で表され、数字が大きくなるほど大型になります。

#0～1: 小型ヤマメなど。藪沢や渓流での近距離用。
#2～4: ヤマメ、イワナなどのサケ科。渓流での中・近距離用。
#4～6: ニジマスなど比較的大型魚。中・大河川・湖での中・遠距離用。
#6～8: 大型ニジマス、ブラウントラウトなど。湖での中・遠距離用。
#8～10: サーモン、海でのシーバスなど大型魚。
#10～15: シイラ、カツオ、マグロなど超大型魚。

フライラインの仕様

フライラインには、太さの他に、テーパー形状や沈下速度などの仕様があります。

テーパー形状

DT (ダブルテーパー): 左右対称のテーパーで、ロールキャストやメンディングがしやすい。
WF (ウェイトフォワード): 左右非対称のテーパーで、遠投に向いている。
ST (シューティングテーパー): WFラインから細い側を取り除いた形状で、超遠投用。

太さ

ロッドやリールと同様に、番手で表されます。

使用目的

F (フローティング): 水面に浮くタイプで、主にドライフライで使用。
S (シンキング): 水中に沈むタイプで、ウェットフライで使用。
I (インターミディエイト): シンキングの中でも沈下速度が遅いタイプ。

シンキングラインの沈下速度

SI (スローシンキング): 5～6.7cm/s
SII (ファーストシンキング): 6.7～10cm/s
SIII (エクストラファーストシンキング): 11.8～13cm/s
SIV (スーパーファーストシンキング): 15.4～18.2cm/s

これらの記号を組み合わせて、フライラインの性質や使用目的を表します。

バッキングライン

バッキングラインは、リールの下巻き糸で、フライラインを巻く前にスプールの内径を大きくするために使用します。また、大型魚を釣る際の予備ラインとしても使用されます。

フライ（フック）のサイズ

フライ（フック）のサイズは、数字が大きくなるほど小型になります。

#32: 米粒以下のサイズ
* #4/0: 非常に大きなサイズ

リーダー・ティペットのサイズ

リーダーとティペットのサイズは、「○X」という単位で表され、数字が大きくなるほど細くなります。強度はポンド（lb)で別途表記されます。

リーダーとティペット

厳密には、リーダーはテーパー部のみを指し、その先に接続するテーパーのない細いラインをティペットと呼びます。しかし、現在市販されているリーダーには、ティペットが一体になっていることが多く、商品にはリーダー+ティペットの長さが記載されています。

リーダーの長さ

一般に、フローティングラインには9ft以上のリーダーが、シンキングラインには7.5ft以下のリーダーが推奨されます。リーダーを長くすると、ドラッグの影響を少なくしたり、魚に見破られにくくしたりする効果がありますが、風の影響を受けやすく、キャスティングが難しくなるというデメリットもあります。初心者は短いものから始めるのがおすすめです。

ティペットとフライのサイズ適合

フライとティペットのサイズが合わないと、フライの動きが不自然になり、釣果に影響します。適切なサイズを選ぶようにしましょう。

フライフィッシングは、自然の中で魚と対峙する、奥深い釣りです。技術の習得は簡単ではありませんが、それだけに達成感も大きいと言えるでしょう。

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