フラッシュサプレッサー

フラッシュサプレッサー（flash suppressor）は、銃器の発射時に銃口から発生する炎、いわゆるマズルフラッシュを抑制するための装置です。フラッシュハイダーとも呼ばれ、主に軍用銃器に装備されています。日本語では「消炎器」と表現されることもあります。

フラッシュサプレッサーと類似の銃口装着型装置としてマズルブレーキがありますが、目的と効果は異なります。ただし、現代の小火器においては、マズルブレーキとフラッシュサプレッサーの機能を兼ね備えたものが多くなっています。

概要

銃身の長い銃器や装薬量の少ない弾薬を使用する場合、発射薬は弾丸が銃口を離れるまでにほぼ燃焼し終え、銃口からは発射煙や若干の燃えカス程度しか排出されません。しかし、銃身の短い銃器や装薬量の多い弾薬を使用する場合には、発射薬が銃口を出た後も燃焼を続け、球状の発火炎（マズルフラッシュ）を発生させます。この発火炎は、夜間射撃時に射手の視界を妨げ、暗順応を阻害することで射撃能力や照準能力を低下させる要因となります。また、夜間戦闘においては、発火炎によって敵に射撃位置を特定されやすくなるという問題があります。フラッシュサプレッサーは、これらの問題を軽減するために開発されました。

原理

フラッシュサプレッサーは、銃口からガスが放出される瞬間に、そのガスを急速に冷却することで発火炎を抑制します。銃口から排出される燃焼火薬の総量は、フラッシュサプレッサーの有無に関わらず変化しませんが、大きな開口部に発射ガスを分散させることによって圧力を低下させ、ガス密度を大幅に減少させます。この圧力低下による温度低下（断熱膨張）と、外気による冷却効果によって、マズルフラッシュの明るさが軽減されます。

機能

初期

初期のフラッシュサプレッサーは、円錐形の漏斗状の形状が主流であり、これらは一般的に「フラッシュハイダー」や「マズルコーン」「フラッシュコーン」と呼ばれていました。この形状のものは、銃口から出た燃焼ガスを漏斗状の内部空間で燃焼させることで、発火炎の発生を抑える構造になっています。また、メガホンと同様に、発射音を前方に拡散させ、射手の耳への負担を軽減する効果もありました。しかし、大型になりやすい点や、発火炎を隠す効果が限定的であること、敵の方向への発火炎を隠せないことから、第二次世界大戦以降の装備例は少なくなっています。

初期のフラッシュハイダーの装備例としては、ブレン軽機関[[銃]]、Rifle No.5 Mk 1 "ジャングル・カービン"、M1ライフル（追加装備）、M1カービン（追加装備）、九九式軽機関[[銃]]、DP28軽機関銃などが挙げられます。

第二次世界大戦以降

第二次世界大戦以降は、銃身径よりもわずかに大きい円筒形で、左右または周囲に複数のスリットや穴を設けた形状のものが一般的になりました。この形状のものは、燃焼ガスをスリットや穴から分散して放出することで、ガスを急速に冷却し、密度と温度を大幅に低下させることで発火炎の発生を抑制します。前方開口型のスリット形状のものも存在しますが、この形状の場合には、スリットに異物が挟まったり、外部からの力で変形しやすいなどの問題があるため、前方をつなげて鳥かごのような形状にしたものが多く採用されています。これらは「フラッシュサプレッサー」や「フラッシュハイダー」として区別なく呼ばれています。

また、この形状のフラッシュサプレッサーは、発射ガスを周囲に拡散させるため、反動を軽減する効果も持ちます。一方で、発射ガスの拡散によって発射音は大きくなる傾向にあります。さらに、上方にのみスリットを設けてコンペンセイターとしての役割も持たせたM16A2のフラッシュサプレッサーのように、複数の役割を持ったものも多く存在します。フラッシュサプレッサーとマズルブレーキの機能を統合した「消炎制退器」も実用化されています。NATO諸国および西側諸国で使用されているアサルトライフルでは、フラッシュサプレッサーの外径を22mmに統一し、ライフルグレネードのランチャーを兼用する例が多く見られます。

第二次世界大戦以降のフラッシュサプレッサーの装備例としては、M16、AK-74、89式5.56mm小[[銃]]などが挙げられます。

関連項目

* サプレッサー

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