フラット (記号)

フラット（♭）とは

フラット（♭）は、西洋音楽の楽譜で用いられる変化記号の一つで、変記号とも呼ばれます。五線譜に書かれた音符の右側に付加され、その音を半音下げることを指示します。イタリア語では「ベモッレ（bemolle）」、フランス語では「ベモル（bémol）」、ドイツ語では「ベー（b, Be）」と呼ばれます。

形状

フラット記号は、縦棒とその下端と中間から右側に伸びる曲線で構成されています。音符の位置に合わせて、この曲線部分が正確に位置するように記述します。この記号は、楽譜上で音の高さを正確に伝えるために非常に重要な役割を果たします。

ダブルフラット

ダブルフラット（♭♭）は、フラット記号を二つ並べたもので、一つのフラットが半音下げるのに対し、ダブルフラットはさらに半音下げ、結果として全音下げることを意味します。

トリプルフラット

まれに、トリプルフラット（♭♭♭）という記号も存在します。これは、ダブルフラットにさらにフラットを追加したもので、結果として音を一全音半下げることを示します。ニコライ・ロスラヴェッツの『ピアノソナタ第1番』（1914年）など、ごく一部の楽曲で見られますが、一般的には使用頻度が低く、別の表記で表現されることが推奨されます。

歴史

フラット記号の歴史は、中世西洋音楽にまで遡ります。当時、ネウマ譜と並行して、アルファベットを用いた音名も使われていました。グイード・ダレッツォが提唱した6音音階の理論では、ロ音（B）にのみ半音低い変ロ音が存在し、高い方を「硬いロ」（B durum）、低い方を「柔らかいロ」（B molle）と区別していました。

「硬いロ」は角ばった「b」で、「柔らかいロ」は丸みを帯びた「b」で表され、前者が現在のナチュラル記号（♮）に、後者がフラット記号（♭）へと発展しました。フラットを意味するイタリア語の「bemolle」やフランス語の「bémol」は、この「柔らかいロ音（B molle）」に由来しています。

文字コード

フラット記号は、コンピュータ上で表示するために、Unicodeなどの文字コードが割り当てられています。これにより、テキストデータとしてフラット記号を扱うことが可能になっています。

関連記号

音楽記号には、フラットの他に以下のような変化記号が存在します。

シャープ（♯）: 音を半音上げる記号。
ナチュラル（♮）: シャープやフラットによって変化した音を元の高さに戻す記号。

これらの記号は、音楽の表現を豊かにするために不可欠な要素です。

まとめ

フラット記号は、西洋音楽において半音下げるという基本的な音の変化を表す記号であり、その歴史は中世まで遡ります。ダブルフラットやトリプルフラットといった派生記号も存在しますが、使用頻度は限られています。音楽を演奏する上で、フラット記号の意味を理解することは、楽曲を正確に表現するために非常に重要です。また、関連する変化記号（シャープ、ナチュラル）との関係性を理解することで、より深く音楽を理解することができます。

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