フラットマンドリン

フラットマンドリンとは

フラットマンドリンは、19世紀末にアメリカで普及した撥弦楽器であり、マンドリンの一種です。スチール弦を2本1組とし、それが4組張られています。調弦は低い方からG-D-A-Eで、音程差は全て5度（ヴァイオリンと同じ）です。金属フレットを持ち、ピックを使って演奏します。

誕生の背景

クラシックマンドリンが19世紀後半にイタリアからアメリカへ渡った際、立って演奏するプレイヤーからの要望に応え、ギブソンの創設者オービル・ヘンリー・ギブソンによって改良されました。クラシックマンドリンのドーム状の背面に対し、フラットマンドリンはヴァイオリンのようにほぼ平らで緩やかな膨らみを持つ形状になり、この特徴から「フラットマンドリン」と呼ばれるようになりました。

構造

フラットマンドリンには、表板に膨らみがあるアーチトップと、完全に平らな表板を持つフラットトップがあります。ボディの形状は、上部に渦巻型のスクロールがあるFタイプと、円形に近い洋ナシ型のAタイプが存在します。Fタイプは高音がよく響ききらびやかで、Aタイプはややおだやかな音色が特徴です。サウンドホールは、ヴァイオリンのようなf字型（Fホール）や、アコースティックギターと同じ楕円形（オーヴァルホール）などがあります。

進化

1919年には、発明家ロイド・ロアーがギブソンに入社し、フラットマンドリンの完成度をさらに高めました。特に、ブルーグラスの創始者ビル・モンローが愛用したF-5と呼ばれるF型マンドリンは、ロイド・ロアーのサインが入ったものが希少価値が高く、高額で取引されています。

派生楽器

同時期にブラジルに渡ったクラシックマンドリンから改良されたバンドリンは、背面が平らな点が共通していますが、形状は大きく異なります。また、エレキギターのようにピックアップを備えたエレキマンドリン（マンドキャスター）も存在します。

フラットマンドリンには、音域に応じてマンドリン、マンドラ、オクターブマンドリン、マンドチェロといった種類があります。

日本での普及

日本のポップス・ロック界では、1970年代からマンドリンが使用され始めました。ガロの「ロマンス」、かぐや姫の「神田川」などの楽曲でその音色を聴くことができます。また、たま（2003年解散）の知久寿焼もフラットマンドリンを演奏していました。近年では、THE ALFEE|THE_ALFEEの坂崎幸之助がライブで、6弦アコースティックギターやガットギターとフラットマンドリンを組み合わせたダブルネック仕様を使用することもあります。

主な奏者

ビル・モンロー
デビッド・グリスマン
マイク・マーシャル
レスター・フラット
リッキー・スキャッグス
マーティー・スチュアート
サム・ブッシュ
マーク・オコナー
クリス・シーリ

関連楽器

フィドル
バンジョー
スティールギター
スライドギター

参考文献

トニー・ベーコン『世界で一番美しいアメリカン･ギター大名鑑　ヴィジュアルでたどるヴィンテージ・ギターの歴史』（DU BOOKS、2013年）ISBN 978-4-92506-472-9

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