フラム2

フラム2（Fram2）ミッション解説

フラム2は、スペースXが運用した地球低軌道への有人宇宙ミッションです。起業家チュン・ワン氏の依頼により実施され、有人宇宙飛行としては史上初めて極軌道に到達したミッションとして注目されています。

搭乗クルーとミッション期間

このミッションには、依頼主であるチュン・ワン氏と、ヤニッケ・ミケルセン、ラベア・ロッゲ、エリック・フィリップスの計4名が搭乗しました。彼らは全員が民間の宇宙飛行士であり、プロフェッショナルではない立場から極軌道飛行に臨みました。ミッションは約3日間という短期間で行われました。

軌道、宇宙船、そして科学調査

フラム2の主要な目的は、地球の極地環境とその宇宙空間、そして宇宙が人体に与える影響に関する科学調査を実施することでした。

使用された宇宙船は、スペースXのクルードラゴン「レジリエンス」です。本来は「エンデュランス」が割り当てられる予定でしたが、スケジュールの変更によりレジリエンスが使用されました。国際宇宙ステーションへのドッキング機能を持たない自由飛行ミッションのため、通常のドッキング機構部分は、広範な視界を提供するパノラマキューポラに置き換えられていました。

ミッション名は、歴史的な極地探検船「フラム号」に由来し、クルーはフラム号のチーク材の小片を宇宙へ携帯しました。

打ち上げは2025年4月1日協定世界時01時46分、ケネディ宇宙センター第39A射点から行われました。軌道は、軌道傾斜角90.01度というほぼ完全な極軌道（遠地点413km、近地点202km）でした。これは、1963年のボストーク6号による記録を更新する有人宇宙飛行での最高軌道傾斜角となりました。極軌道投入のため、打ち上げは南方向へ実施され、新しい緊急脱出シナリオに対応するソフトウェア更新も行われました。

ミッション中に計画・実行された主な科学調査には、高層大気の発光現象（STEVE、グリーンフラグメント）の研究、宇宙での人体影響に関する実験（宇宙でのX線撮影など）、宇宙でのキノコ（オイスターマッシュルーム）栽培（初の試み）、教育機関向けのアマチュア無線による画像伝送などがあります。

これらの実験について、専門家からは「単なる目新しさ以上のものだが、画期的な節目とまでは言えない」との評価もあり、科学的な価値は限定的で、軌道に関わらず実施可能な内容も含まれるとの指摘がありました。しかし、極地探検というテーマは、クルーにとって個人的な意義を持つものでした。

ミッション完了と特徴的な着水

フラム2ミッションは、2025年4月4日協定世界時16時19分28秒に、カリフォルニア州オーシャンサイド沖の太平洋に着水し、完了しました。

この太平洋への着水は、スペースXのクルードラゴン宇宙船としては初めてのことでした。これは、再突入時にトランクモジュールを長く宇宙船に結合させておくことで、残骸が陸地に落下するリスクを低減し、ポイント・ネモのような遠隔海域（宇宙船の墓場と呼ばれる場所）への誘導を容易にするための措置と考えられています。過去には東海岸への着水が主流でしたが、トランクモジュール残骸の陸上落下問題を受けての変更とみられます。

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