フラワシ

フラワシ（Fravaši）は、ゾロアスター教において重要な役割を担う聖霊、または下級神として知られています。アヴェスター語ではフラワシと称され、パフラヴィー語ではフラワルド（Fravard）またはフラワフル（Fravahr）と呼ばれます。

その図像は、当初「円環に翼、尾、そして脚（蛇）が付いたもの」として表現されていました。しかし、サーサーン朝時代に入ると、翼は簡略化され、最終的には「円環に細長い布片（リボン状の脚＝蛇が変化したもの）」が付属する形へと変化しました。この図像の変化は、フラワシの概念が時代とともにどのように解釈され、表現されてきたかを示す興味深い例と言えるでしょう。

フラワシは、この世のあらゆるものに宿ると考えられており、その数は「99,999体」と例えられるほど多いとされます。この概念は、自然現象を含むあらゆる事象が霊的な存在によって動かされているとするゾロアスター教の世界観を反映しています。フラワシが宿るものは善、宿らないものは悪とされ、善悪の区別において重要な役割を果たします。特に人間においては、魂の中で最も神聖な部分がフラワシであるとされています。また、人の誕生から死まで、その人物に常に寄り添い、善悪の判断を助け、正しい道を歩むように導く守護霊のような存在であるとも考えられています。

古代イランでは、一年の終わりにあたる10日間、フラワシを祀る特別な期間（ハマスパスマエーダヤの祭典）が設けられていました。この期間中、各家には先祖の霊であるフラワシが集団で訪れると信じられ、人々は火を焚いて彼らを迎え入れ、祀る儀式を行いました。この習慣は、インドに伝わり、盂蘭盆の起源になったという説もあります。フラワシは、単なる神霊としての存在ではなく、生者と死者を繋ぐ役割も担っていたと言えるでしょう。

フラワシの概念は、ゾロアスター教の信仰体系において、善悪の区別、霊的な存在の重要性、そして祖先崇拝といった、重要な要素を結びつけていると言えます。その図像の変遷は、宗教的な観念が時代や文化によってどのように解釈され、表現を変えていくかを示す好例であり、宗教史や美術史の研究においても重要な意味を持つと考えられます。

関連事項

* ファラヴァハル

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