フランク・エリクソン

フランク・ウィリアム・エリクソン

フランク・ウィリアム・エリクソン（Frank William Erickson, 1923年9月1日 - 1996年10月21日）は、アメリカ合衆国が生んだ重要な音楽家の一人です。作曲家、編曲家、そして音楽教育家として多岐にわたり活躍しましたが、特に吹奏楽の分野において、その名前は世界中の演奏家や教育者によく知られています。また、彼は楽譜出版社の経営者という顔も持っていました。彼の姓は「エリックソン」と表記されることもありますが、母語の発音に近いのは「エリクソン」とされています。

エリクソンは、1923年にワシントン州スポケーンに生を受けました。幼少期から音楽に親しみ、8歳でピアノ、10歳になるとトランペットを始めました。高校を卒業後、陸軍の軍楽隊に入隊し、ここで編曲の技術を深く学ぶ機会を得ました。軍務を終えた後、学業を続け、1950年には南カリフォルニア大学で音楽の学士号を、そして翌年には修士号を取得しました。教育者としては、1958年から1961年にかけて、カリフォルニア大学ロサンゼルス校やサンノゼ州立大学で教鞭をとりました。

教育者としての活動と並行して、エリクソンは楽譜出版業界にも深く関わりました。ボーン出版社の西海岸における責任者を務めた後、1970年には自身でシュミット出版社を設立しました。この出版事業を通じて、彼は自身の作品だけでなく、他の作曲家の作品も世に送り出し、吹奏楽の普及と発展に貢献しました。長年にわたり音楽界に貢献したエリクソンは、1996年にその生涯を閉じました。

彼の作品は、特に教育的な配慮がなされている点で高く評価されています。楽譜出版に携わった経験が、若い演奏家が取り組みやすく、かつ音楽的に充実した楽曲作りに生かされています。彼の作品の大きな特徴として挙げられるのは、美しいメロディと豊かなハーモニーです。これらの要素が組み合わさることで、彼の音楽は多くの人々に愛され続けています。生涯に残した作品は400曲以上に及び、今日でも吹奏楽の定番レパートリーとして広く演奏されています。

代表的な作品には以下のようなものがあります。

バンドのための幻想曲 (Fantasy for Band)
序曲「祝典」 (Overture Jubiloso)
バンドのためのトッカータ (Toccata for Band)
バンドのための序曲 パストラール (Overture Pastorale for Band)
* バンドのためのアリア (Air for Band)

作曲・編曲活動の傍ら、彼は著作も残しています。日本でも翻訳が出版された『バンドのための編曲法 : わかりやすいオーケストレイション』（伊藤康英訳、東亜音楽社）は、吹奏楽における編曲の技術を学ぶ上で貴重な一冊となっています。エリクソンの残した功績は、彼の作品を通して、また彼が関わった教育や出版事業を通して、今なお多くの人々に影響を与えています。彼はまさに、20世紀の吹奏楽界を語る上で欠かせない人物の一人と言えるでしょう。

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