フランク・マクファーレン・バーネット

フランク・マクファーレン・バーネット：オーストラリアが生んだ免疫学の巨人

フランク・マクファーレン・バーネット（1899年～1985年）は、20世紀を代表するオーストラリアのウイルス学者であり、免疫学の分野に革命をもたらした偉大な科学者です。ビクトリア州トララルゴンに生まれた彼は、メルボルン大学、ロンドン大学で医学博士号を取得後、バクテリオファージやウイルスの研究に没頭しました。これらの微生物の生態、増殖メカニズム、そして免疫系との複雑な相互作用を解明する上で、数々の重要な発見を成し遂げました。

彼の研究は、1950年代から免疫学へと軸足を移します。バーネットは、免疫系の主要な構成要素である白血球が、どのようにして標的となる抗原を特定し破壊するのかを説明する画期的な理論、「クローン選択説」の確立に大きく貢献しました。この理論は、免疫系の特異性と多様性を説明する上で中心的な役割を果たし、現代免疫学の基礎となっています。

バーネットの最も重要な業績の一つが、免疫寛容に関する研究です。免疫寛容とは、自己の組織を攻撃しないように免疫系が制御されている現象で、バーネットはピーター・メダワーと共にこのメカニズムの解明に挑みました。彼らの共同研究は、臓器移植における拒絶反応の抑制に繋がる重要な発見をもたらし、現代の移植医療の礎を築きました。この功績により、二人は1960年度のノーベル生理学・医学賞を共同受賞しています。

バーネットは、1956年に研究機関を離れ、メルボルン大学で1978年まで教鞭をとり続けました。その間に発表した論文は500編を超え、著書も31冊に及びます。研究活動に加え、彼はオーストラリアの医療政策にも積極的に関与し、オーストラリア科学アカデミーの設立にも尽力、後に会長を務めるなど、オーストラリアの科学界を牽引する存在でした。

彼の科学的な貢献に加え、バーネットは多大な栄誉を受けました。1942年には王立協会フェローに選出され、1960年には初代のオーストラリアン・オブ・ザ・イヤーに輝きました。さらに、1978年にはオーストラリア勲章を受賞し、ナイトの称号を授与されています。ロイヤル・メダル、クルーニアン・メダル、コプリ・メダルなど数々の科学賞を受賞しており、彼の業績は国際的にも高く評価されています。また、1952年にはアルバート・ラスカー基礎医学研究賞とエミール・フォン・ベーリング賞を受賞しています。これらの受賞歴は、彼の研究が免疫学の発展にどれほど大きな影響を与えたかを物語っています。

バーネットの自伝『変わりゆくパターン』(Changing Pattern)は、彼の生涯と研究を深く理解する上で貴重な資料となっています。彼の生涯は、卓越した研究者としての功績だけでなく、オーストラリアの科学界発展に貢献したリーダーとしての面も示しており、現代の科学者にとって大きな啓発を与えてくれるものです。彼の業績は、現代医学、特に免疫学や移植医療に計り知れない影響を与え続けており、今後も高く評価され続けるでしょう。

もう一度検索