フランシス・ロードン＝ヘイスティングズ (初代ヘイスティングズ侯爵)

初代ヘイスティングズ侯爵フランシス・ロードン＝ヘイスティングズは、18世紀から19世紀にかけて活躍したイギリスの政治家、軍人、そして貴族です。彼は、その軍事的な才能と政治手腕を発揮し、特にインド総督としての功績で知られています。しかし、その後半生は汚職疑惑により、不名誉な形で終わることとなりました。

生い立ちと初期のキャリア

1754年、アイルランド貴族の家に生まれたロードン＝ヘイスティングズは、ハーロー校、オックスフォード大学で教育を受けました。その後、軍人の道に進み、アメリカ独立戦争ではイギリス軍の士官として従軍。キャムデンの戦いやホブカークスヒルの戦いなど、数々の戦いに参加しました。一時帰国後はアイルランド議会議員を務めましたが、再び軍務に戻り、最終的には大佐にまで昇進しています。

1783年にはグレートブリテン貴族「ロードン男爵」に叙され、その後も王立協会フェローや考古学協会フェローにも選出されました。1793年には父の死により第2代モイラ伯爵位を継承し、1802年から1806年にはスコットランド駐留軍最高司令官を務めました。また、フリーメイソンのイングランド首位グランドロッジのグランドマスター代理も務めるなど、多岐にわたる活動を展開しました。

インド総督としての活躍

1813年、ロードン＝ヘイスティングズは59歳でベンガル総督（インド総督）に就任します。これは、摂政皇太子ジョージ（後のジョージ4世）の強い後押しによるものでした。総督就任直後、ネパールとの間でゴルカ戦争が勃発。ロードン＝ヘイスティングズはこれを勝利に導き、ネパールに領土割譲とイギリス人の常駐を認めさせました。さらに、マラータ諸国との間で第三次マラータ戦争を起こし、マラータ同盟を解体。イギリスによるインド征服を完了させました。

また、東南アジアへの進出も図り、シンガポールを買収し、シャム（現在のタイ王国）との交易を試みるなど、積極的な外交政策を展開しました。内政面では、ムガル帝国時代の灌漑システムを修復し、デリーへの給水を実現するなど、社会基盤の整備にも尽力しました。

失脚と晩年

しかし、ロードン＝ヘイスティングズのインド総督としてのキャリアは、汚職疑惑によって終焉を迎えます。東インド会社役員会は、彼が個人的な利益を図るために融資を許可したとして非難。調査を開始し、ロードン＝ヘイスティングズは召喚されかけましたが、国王ジョージ4世の介入により召喚は免れ、自ら総督職を辞任することとなりました。このスキャンダルにより、ロードン＝ヘイスティングズは汚職政治家としての悪名を着ることになりました。

帰国後の1824年、マルタ総督に就任しますが、その2年後、落馬事故によりこの世を去りました。遺産はほとんど残されておらず、東インド会社が長男のジョージに2万ポンドを贈与したという逸話が残っています。

家族

ロードン＝ヘイスティングズは、スコットランド貴族の娘フローラと結婚し、6人の子供をもうけました。その子供たちは、それぞれイギリス社会で重要な役割を果たすこととなりました。

ロードン＝ヘイスティングズは、その軍事的な才能と政治手腕により、イギリスのインド支配を大きく進展させました。しかし、その一方で、汚職疑惑により名声を失った人物としても記憶されています。彼の生涯は、野心と成功、そして転落という、歴史の複雑な側面を映し出していると言えるでしょう。

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