フランスの鉄道史

フランスの鉄道の発展は19世紀初頭から始まり、現在に至るまで多くの変遷を経てきました。特に、高速鉄道 TGVの登場は、フランスの輸送網を一変させました。本稿では、フランスの鉄道の成り立ちから現代に至るまでの重要な出来事と変化について掘り下げます。

初期の鉄道網

フランスにおける鉄道の建設は1827年に始まりました。その最初の一歩となったのは、サン＝テティエンヌ-アンドレジュー鉄道という短区間の鉱業用路線でした。この開業は鉄道交通の発展を示す重要な出来事です。

旅客輸送を行う路線が初めて開業したのは1832年で、サン＝テティエンヌとリヨンを結ぶ58キロメートルの線路でした。この路線は、並行して存在する運河との競争に打ち勝つ形で成功を収めました。さらに、1837年にはパリとサン＝ジェルマン＝アン＝レー間の初の通勤鉄道が開通し、パリ周辺の交通機関を一新しました。また、1841年にはストラスブールとバーゼルを結ぶ路線が開通し、これがヨーロッパ初の国際鉄道となりました。

しかし、1840年代初頭には、フランスの鉄道網の発展は他の工業国に比べて遅れをとっていました。この時期では、政府の積極的な関与は見られず、数少ない民間事業者によってのみ鉄道が運営されていました。

政府の関与と法制化

1842年に制定されたフランス幹線鉄道建設法の成立は、鉄道建設の進展に大きな影響を与えました。この法律により、政府の支援が得られるようになり、鉄道の建設が加速しました。この仕組みは、官民協力という独自の形を取っており、政府は土地を購入し、基礎構造物の建設費を補助する一方で、上部構造物や車両の製造を行う企業に路線の独占契約を認めました。この法律に基づいて作られた鉄道網は、パリを中心とする放射状の幹線と地方間の路線から成り、1860年代までにその大枠が成立しました。このように、フランスの鉄道網は政府の強い関与によって形成されたのが特徴的です。

主要な鉄道会社の誕生

初期の小規模事業者は、1857年までには6つの大規模鉄道会社に統合されることになります。これらの会社はほとんどがパリと各地方を結ぶことを目的とし、その結果、パリは便利である一方、地方の鉄道サービスが不十分といった状態が続きました。

- 北部鉄道: パリから北フランスおよびイギリス海峡の港へ。
- 東部鉄道: パリから東フランスへ。
- 西部鉄道: パリからノルマンディー、ブルターニュへ。
- パリ・オルレアン鉄道: パリからオルレアンを経て南西部へ。
- パリ・リヨン・地中海鉄道: パリから南東部および地中海沿岸へ。
- 南部鉄道: ガロンヌ川流域からスペイン国境へ。

これらに加え、地方においては小規模な私鉄も運営されていました。1865年には軽便鉄道に対する補助制度が設けられ、1878年にはいくつかの私鉄が国有化され、国有鉄道が設立されました。

国有化とその後の展開

1930年代、自動車の普及が進む中で、多くの鉄道事業者は経営危機を迎えました。政府は1938年、すべての幹線鉄道を国有化し、公営企業の形態を取るSNCFを設立しました。この動きは、国の産業政策の一環として重要な役割を果たしました。

戦後の1950年代までに、多くの狭軌路線が廃止され、70年代にも不採算路線が同様に廃止され、現在の標準軌路線のネットワークも約40,000キロメートルに減少しました。しかし、この時期、フランスは鉄道の高速化に力を入れ、1970年代にはTGVの開発が進み、1981年に運行を開始しました。これによりフランスの鉄道は新たな時代を迎え、輸送量は増加し続けています。

現代の鉄道改革

1990年代以降、欧州連合の影響を受けて、フランスの鉄道事業は改革を進めています。鉄道運営の分権化が進み、各地域圏が輸送計画の策定や運賃の決定に関与するようになりました。こうした動きは地域ごとのニーズに応じた柔軟なサービスを提供することを目的としています。

まとめ

フランスの鉄道は、その歴史において多くの変革を遂げてきました。政府の関与や国有化を通じて形成されたこのネットワークは、今日ではフランス国内の移動手段として不可欠な存在となっています。これからもフランスの鉄道は、交通インフラの一翼を担い続けることでしょう。

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