フランス・ホット・クラブ五重奏団

フランス・ホット・クラブ五重奏団：伝説の幕開けと終焉

フランス・ホット・クラブ五重奏団（Quintette du Hot Club de France）は、1934年にフランスで、ギタリストのジャンゴ・ラインハルトとヴァイオリニストのステファン・グラッペリによって結成された、20世紀を代表するジャズ楽団の一つです。様々な変遷を経て、1948年まで活動を続けました。

彼らは、ヨーロッパのコンチネンタル・[[ジャズ]]における初期の重要な楽団として知られ、その独創性は、批評家トム・ジュレックをして「録音されたジャズの歴史において、最もオリジナルなバンドのひとつ」と言わしめました。

黄金期の編成

最も有名な編成は、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリを中心に、ベーシストのルイ・ヴォラ、リズムギターのロジェ・シャプーとジョゼフ・ラインハルト（ジャンゴの弟）が加わったものでした。この編成により、アンサンブルに独特の厚みと、時には打楽器的な効果をもたらしました。

結成秘話

楽団結成については、いくつかの異なる説が存在します。

一般的な説は、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリが中心となり、舞台裏でのジャム・セッションから自然発生的に生まれたというものです。しかし、ベーシストのルイ・ヴォラは、トゥーロンの浜辺でラインハルト兄弟を見出し、彼らを自分のバンド（グラッペリ、シャプーが参加）とのジャムに誘ったと語っています。

ホテル・クラリッジでの非公式なジャム・セッションを経て、コンサート・プロモーターのピエール・ヌーリーとシャルル・ドロネーから、正式な楽団結成を促されました。彼らは、ユーグ・パナシエを会長とするジャズ愛好家団体「Hot Club de France」の中心人物であり、この組織が楽団名に影響を与えたと考えられます。ジャンゴの弟ジョゼフが2人目のリズムギターとして加わり、五重奏団はジプシー・ジャズのスタイルを確立し、ヨーロッパツアーで成功を収め、特にイギリスで人気を博しました。

ただし、メンバーは固定ではなく、ベースやリズムギターの交代が頻繁にありました。活動期間を通して不動のメンバーは、ジャンゴとグラッペリの2人だけでした。

1937年、アメリカのジャズ歌手アデレード・ホールが、パリのモンマルトルにナイトクラブ「La Grosse Pomme」をオープンし、フランス・ホット・クラブ五重奏団をレギュラーバンドとして迎えました。

戦争の影と再結成

1939年9月、第二次世界大戦が勃発。イギリスでコンサートツアー中だった楽団は、ジャンゴがフランスへの帰国を決意した一方、グラッペリはイギリスに残留しました。

ジャンゴはその後、クラリネット奏者と通常のリズム・セクションからなる別の楽団で「フランス・ホット・クラブ五重奏団」の名義を使用し続けました。この編成は、オリジナル・クインテットとは異なり、6人編成となることもありましたが、「ジャンゴ・ラインハルトとフランス・ホット・クラブ五重奏団」または「ジャンゴの新五重奏団」として活動しました。戦時下の物資不足から録音は少ないものの、ジャンゴの代表作であり、ジャズ・スタンダードとなった「ヌアージュ」の初録音はこの編成によるものです。

戦後、1946年にグラッペリとジャンゴは再会し、弦楽器のみの編成を復活させました。しかし、リズムギターやベーシストは再び頻繁に交代しました。この最後の時期の五重奏団は、1948年頃まで断続的に演奏と録音を続け、その活動に終止符を打ちました。

フランス・ホット・クラブ五重奏団は、その革新的な音楽性と、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリという2人の天才の才能によって、ジャズの歴史に輝かしい足跡を残しました。

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