フランソワ・ドヴィエンヌ

フランソワ・ドヴィエンヌ

フランソワ・ドヴィエンヌ（François Devienne, 1759年1月31日 - 1803年9月5日）は、18世紀後半のフランスで活躍した作曲家であり、卓越した木管楽器奏者でした。フルートとファゴットの名手として知られ、その優雅で流麗な旋律様式から、「フランスのモーツァルト」と称されることもあります。

彼は1759年、オート＝マルヌ県のジョワンヴィルにて、鞍職人の家庭に生を受けました。十四人兄弟の末子であったドヴィエンヌは、地元で聖歌隊員として最初の音楽教育を受け、音楽の道への第一歩を踏み出します。

1780年頃には、名手として知られたフェリックス・ローにフルートを師事し、ド・ロアン枢機卿の執事に仕える身となりました。その後、彼はパリへと活動の場を移し、フルートやファゴット奏者として様々なアンサンブルでソリストまたは楽団員として活躍しました。特にファゴット奏者としては、パリ・オペラ座のメンバーにも名を連ねています。当時の多くの音楽家と同様、ドヴィエンヌもフリーメイソンの会員であり、会員が多数を占めていたことで知られるコンセール・ドゥ・ラ・ロージュ・オランピックの団員としても活動しました。

ドヴィエンヌは教育者としても重要な足跡を残しています。彼はフランス防衛軍の軍楽隊員（階級は軍曹）でもあり、公的な義務として、軍楽隊員の子女を対象とした無料の音楽学校で指導にあたっていました。フランス革命の激動期を経て、この無料音楽学校は国立音楽学校へと発展し、1795年にはかの有名なパリ音楽院へと改組されます。この再編成に伴い、ドヴィエンヌは音楽院の管理者の一員となると同時に、フルート科の教授に任命されました。教育者としての重要な功績として、1793年に出版された画期的なフルート教則本『フルート演奏の理論と実践』が挙げられます。この教則本はその後も版を重ね、18世紀後半のフランスにおける吹奏楽の発展に多大な貢献をしました。

作曲家としては、1790年代にオペラで注目を集めました。中でも1792年に発表された『レ・ヴィジタンディーヌ』は大きな成功を収めました。ドヴィエンヌは生涯にわたり、約300曲にも及ぶ器楽曲と12曲のオペラを作曲しました。彼の器楽曲の多くは管楽器のために書かれており、特に約10曲のフルート協奏曲や4曲のファゴット協奏曲は今日でも演奏される機会があります。その他にも、吹奏楽のための交響曲や、様々な編成による三重奏曲、四重奏曲といった室内楽曲も数多く残されています。

しかし、晩年は精神的な病に苦しみ、1803年にパリ近郊のシャラントンにあった療養所でその生涯を終えました。演奏家、教育者、そして作曲家として、フランソワ・ドヴィエンヌは18世紀後半のフランス音楽界において、特に管楽器音楽の分野で重要な役割を果たした人物です。

もう一度検索