フランソワーズ・ジルー

フランソワーズ・ジルー：ジャーナリズム、政治、そして女性の解放

フランソワーズ・ジルー（Françoise Giroud, 1916年9月21日 - 2003年1月19日）は、フランスを代表するジャーナリスト、映画脚本家、作家、そして政治家です。彼女の波瀾万丈な人生は、20世紀のフランス社会の変遷と深く結びついています。

生い立ちと初期のキャリア

スイスのローザンヌで生まれたジルーは、トルコ人のジャーナリストである父と、ロシア系の母を持つという国際的な背景を持っていました。14歳で父を亡くし、学業を断念せざるを得なくなった彼女は、パリの書店で働き始めます。そこで映画監督のマルク・アレグレに見出され、映画界へと足を踏み入れました。アレグレ、ジャン・ルノワール、ジャック・ベッケルといった名監督の作品で、スクリプター、脚本家、助監督として才能を発揮し、着実にキャリアを築いていきました。

第二次世界大戦とレジスタンス活動

第二次世界大戦中、ジルーは日刊紙『パリ＝ソワール』に寄稿する傍ら、レジスタンス運動に参加します。しかし、1944年にゲシュタポに逮捕され、フレンヌ刑務所に収容されるという苦難を経験しました。姉のジャナーヌもレジスタンス活動に参加していましたが、ラーフェンスブリュック強制収容所で命を落としました。この経験は、ジルーの人生に深い影を落とし、彼女の社会に対する意識をより一層強くしました。

『ELLE』編集長としての活躍

戦後、ジルーは『フランス・ソワール』の編集長であったピエール・ラザレフの妻、エレーヌ・ラザレフにその才能を見出され、1946年に女性雑誌『ELLE』の編集長に抜擢されます。『ELLE』は、単にファッションを紹介するだけでなく、ホームレス問題や離婚、人工妊娠中絶といった社会問題にも積極的に取り組みました。ジルーは、女性読者に参政権の行使や就労を呼びかけ、社会への積極的な参加を促しました。アベ・ピエールやブノワット・グルーといった知識人や活動家を起用し、雑誌を通じて社会的な議論を巻き起こしました。

『レクスプレス』創刊と政治への関与

1953年、ジルーは『ELLE』を辞任し、ジャーナリストのジャン＝ジャック・セルヴァン＝シュレベールと共に週刊誌『レクスプレス』を創刊します。『レクスプレス』は、インドシナ戦争の和平解決を訴え、アルジェリア戦争中は植民地主義、特にフランス軍による拷問を厳しく批判しました。フランソワ・モーリアックやアルベール・カミュといった著名な知識人が寄稿し、世論に大きな影響を与えました。

女性の地位向上への貢献

1974年、ジルーはヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領により、女性の地位副大臣に任命され、政界入りを果たします。フランスの内閣に女性の権利に関する大臣が置かれるのは初めてのことであり、ジルーは女性の地位向上に尽力しました。シモーヌ・ヴェイユと共に、中絶の合法化や女性の社会進出を推進し、フランス社会における女性の役割を大きく変えました。

その後

政界引退後、ジルーは再び執筆活動に専念し、『アルマ・マーラー』、『マリー・キュリー』、『イェニー・マルクス』など、多くの伝記作品を発表しました。これらの作品は、女性の生き方や社会における役割を問い直し、多くの読者に感銘を与えました。2003年1月19日、ジルーは86歳で亡くなりましたが、彼女の遺志は、多くの人々に受け継がれています。

フランソワーズ・ジルーは、ジャーナリズム、政治、そして文学の世界で、その才能と情熱を発揮し、フランス社会に大きな足跡を残しました。彼女の生涯は、困難に立ち向かい、自らの信念を貫き通すことの重要さを教えてくれます。

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