フランチェスカ・カッチーニ

フランチェスカ・カッチーニ (Francesca Caccini)

フランチェスカ・カッチーニ（1587年9月18日生 - 1640年頃没）は、イタリアのバロック時代に活躍した作曲家、声楽家、リュート奏者、音楽教師です。フィレンツェに生まれ、有名な音楽家ジュリオ・カッチーニの長女として育ちました。彼女は近年その功績が再評価されている17世紀の重要な女性作曲家の一人です。特に、その代表作である歌劇《ルッジェーロの救出（La liberazione di Ruggiero dall'isola d'Alcina）》は、女性が作曲した初期のオペラの一つであるだけでなく、イタリア国外で初めて上演されたイタリア・オペラとしても特筆される作品です。妹のセッティミア・カッチーニも作曲家でした。

生涯

フランチェスカはフィレンツェに生まれました。幼少期の音楽教育は父ジュリオから受けたと考えられています。公の場での活動が最初に記録されたのは、1600年、フランス国王アンリ4世とマリー・ド・メディシスの婚礼に歌手として参加した時です。父ジュリオはこの祝典で音楽を担当していました。1604年には一家でフランスを訪問し、フランチェスカはその見事な歌声をアンリ4世に称賛され、フランス宮廷にとどまるよう求められましたが、フィレンツェ当局の許可が得られずイタリアへ帰国しました。イタリア国内でも彼女の名声は高まり、クラウディオ・モンテヴェルディも彼女の音楽的な才能を高く評価したと伝えられています。1607年には、父も属した「カメラータ」の同人ジョヴァンニ・バッティスタ・シニョリーニと結婚しました。

この頃から作曲家としても才能を発揮し始めます。メディチ家の依頼により、台本作家ミケランジェロ・ブオナローティと協力し、オペラの創作に取り組みました。彼女のキャリアで最も大きな成功の一つは、1625年にポーランドのヴワディスワフ王子歓迎式典のために作曲した歌劇《ルッジェーロの救出》です。この作品は1628年にはワルシャワでも上演され、これはイタリア国外でイタリア・オペラが上演されたことを示す最も初期の記録の一つとなっています。

彼女の後半生に関する確かな記録は少ない現状です。フィレンツェには、元老院の夫人フランチェスカ・カッチーニが1640年に没したとする記録がありますが、これが音楽家の彼女を指すなら再婚したことになります。しかし、これが別人に関するものならば、音楽家の没年はこれより早く、1630年頃の死去を示唆する資料も存在します。

作品

フランチェスカ・カッチーニは生涯に5つの歌劇を作曲したとされますが、《ルッジェーロの救出》を除き失われました。歌劇以外には、宗教曲、世俗歌曲、器楽曲といった小規模作品を手掛けました。彼女が唯一出版した曲集『音楽 第1巻（Il primo libro delle musiche）』（1618年）には、独唱または二重唱と通奏低音のための多様な作品が収められています。多様な楽種を用い、いくつかのモテットは初期バロック音楽の特徴を示しています。

彼女の作品はモノディが中心です。その旋律や和声の大胆さにおいては、父ジュリオの作品を凌ぐ側面も見られます。これは、自身の卓越した歌唱技術を生かせるよう、意図的に作曲された結果と考えられます。

日本での紹介

日本においては、歌劇《ルッジェーロの救出》が紹介されています。1983年に国立音楽大学音楽研究所により上演され、後に同研究所の演奏によるCDもリリースされました。また、1987年には、同研究所からこの作品のファクシミリ版楽譜も出版されています。

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